末浦 広海『檻の中の鼓動』

檻の中の鼓動

檻の中の鼓動

問題を起こして警察の職を辞し現在はデリヘルの責任者として生きる女性が主人公で、分類するならばハードボイルドということになると思うのですが、女主人公のハードボイルドとしては出色の出来。圧倒的に男性が多い世界に属する女主人公ってやたらと“いい女”描写のオンパレードだったり女性の“性”の部分を強調する描写が鼻についたりするんだけど、この作品の主人公は女である故の失敗で全てを失ったにも関わらず性的な意味での女の匂いがしないのです。だからといって女であることを捨てているわけではなく女としての心情描写もちゃんとあり、年齢はやや異なるものの頭の中では完全に天海さんで読んでいたといえばイメージしやすいでしょうか?、同性に好かれる姐さんタイプなのです。そんな主人公が関わる事件も肉体的に女が手に負える範囲であり、精神的に女が関わるべきものであり、物語の中で女主人公が無理なく動いててトータル的に良バランス。これはぜひとも続編が読みたい。