貫井 徳郎『後悔と真実の色』

後悔と真実の色

後悔と真実の色

前半は警察という組織特有の人間関係も含めたストレートな警察小説で、視点となる人物の属性が変わる後半は犯人へ至る推理の過程を描くミステリ小説としての要素が強くなるので、一粒(一冊)で2度美味しい的な作品です。結構な人数が登場するのですが、さほど分かりやすい個性が与えられてるわけではないのにこの人数がしっかり描き分けられてるのはすごいなと感心しきり。肝心の人物の転落っぷりを初め、あらゆる動きがサクサクと描かれているので深く掘り下げられている・・・というわけではないのですが、みんないいところもあればいやなところもあって、“人間味”が感じられます。
貫井さんと言えばラストのどんでん返しだと思うのですが、それに関してはアッサリめ。人物描写だけでなくその背景も描きすぎなんじゃ・・・?と思えてしまうほど細かく丁寧に描いてくれているせいで最終的にこの人物しか残らないだろうってのがかなり早い段階で読めてしまうもんで、アッサリというより今回はどんでん返しはありませんでした、と言ったほうがいいかも。でもきっと貫井さんはそういうつもりで書いたのではないかなと思う。謎解きよりも人間ドラマに重きを置いて書かれたのだと思う。だから、どんでん返しがなくとも充分読み応えがありました。
しかしなぁ・・・警察(刑事)は離婚率が高いとは聞くものの、どの家庭もなんていうか・・・もうちょっとなんとかならないもんだろうかと思う。ならないのが現実、なんだろうけど。