金城 一紀『映画篇』

映画篇

映画篇

それぞれ映画の作品名がタイトルの短・中篇集です。それぞれの物語が小憎たらしいほどタイトル(映画)のイメージというか世界観を金城流の物語として見事に表現してくれちゃってる上に、読み進むにつれて各話がちょっとずつリンクしていくのが分かってくるのですが、そのリンク具合がこれまた小憎たらしいほどの良バランスで、それぞれの物語に流れる時間が一つになった瞬間はなんかもうすごいすごいって心がふるふる震えてしまって、エエエエ!?おばあちゃーんマジで!?って泣き笑い。私の読書タイムは通勤電車の中なので泣くな私!と必死で我慢したのに気がついたら目の周りの化粧が滲んですんごい顔になってました。
私の場合ですが、実生活が楽しくてたまらない時って映画を見ようとは思わなくて、むしろちょっと疲れてるときとか弱ってるときとか眠れないときとか、なんかこう、現実逃避したくなるときに見ることが多いせいで映画って非現実の象徴だよな・・・と思っていて、だから映画好き、映画マニアの人って常に現実逃避してるというか、どこか脆そうだなぁってイメージを持ってたりするわけです。自分でもよく分からないほんと勝手なイメージなんですけど。で、金城一紀という人は間違いなく映画を愛してる人で、私のイメージ通りの脆さがこの本の中に溢れていて、でもそれは壊れやすいとかそういうものではなくて、脆いという言葉が悪いのかな・・・純粋・・・かな、純粋さゆえに傷つき壊れかけ、純粋に誰かを想い、純粋に行動する・・・もっと上手くもっとずるく生きたほうが絶対楽だと思うけど、でもそれって結構素敵なものを見逃してたりするんだろうなぁって、なんかかなり脱線してる感想ですけど、そんなことを思ったりしました。
全作に登場するフランス映画がどれほどイマイチなのか、実はそれがいちばん気になるところ(笑)。