深谷 忠記『Pの迷宮』

Pの迷宮

Pの迷宮

人間の「記憶」を扱った作品。裁判官の夫を持つ主婦がホテルで人を刺したという。主婦は完全に黙秘を貫く。罪の否定も、殺意の否定もしない主婦。何故そのような態度を取るのか。殺された有名精神科医の関係者だという女から依頼され、フリージャーナリストが事件を追う。事件の元には心の病に罹った夫婦の一人娘が?カウンセラーの尽力により取り戻した記憶。それは抑圧された記憶なのか?そして事件の真相は? といった感じ。「パニック障害」「PTSD」「性的虐待」「洗脳」などなどイマドキ感満載。ただそれほど安っぽくないのは、冒頭で殺人を犯す母親が黙秘を続ける理由(動機)を探るという設定で、裁判シーンが中心だからかな。検事とジャーナリストという二つの線で事件の真相が探られていく。隠されているためか娘の心の中がそれほど描かれないのは少し物足りない。それでも丁寧に書かれているし、黙秘を貫いた動機も表向きのものの後ろにもうひとつあったりして、物語を読んだって感じ。まぁ、一番オカシイのは殺された精神科医だよな。やっぱり怪しい世界だ。