『カルテット』第9話

このドラマは感想を書くようなドラマじゃないなと思いながらも見たもの受け止めたもの感じたものを言葉という形で吐き出さなければ破裂してしまう!!という思いに駆られて毎回毎回ダラダラと書き連ねてきましたが、今回は書く必要がない。言葉が見つからないし、最終回まで吐き出さず、なんなら息すら止めた状態で見たものを見たまんま抱え続けていたい。
6千万貰えてたらの一言で大事な家族を失った家森さんが今はみんなと出会ったから人生やり直しボタンを押さないと思えるようになって、そう言える相手ができてよかった。
家森さんが誰かのために泣けるひとでよかった。
これまで数々の美味しそうなごはんを見せられてきたけれど、すずめちゃんが作るシンプルな和食がこれまでで一番美味しそうで、まだ夜が明ける前に朝ごはん(だよね?)を黙々と食べる三人を見ながら『明けない夜はない』という言葉が浮かんだ。
泣きながらご飯を食べたことがあるひとは生きていけるんだって。マキさんがそう言ってた。
生きていけるよ家森さん!!。
マキさん不在の間、ちゃんとしてないすずめちゃんと家森さんと、ちゃんとしていないひとを甘やかしたい別府くんはどうやってマキさんを待つのだろうか。
不思議とそこに不安はない。あれだけ不穏で不安を感じてきたというのに、今はむしろ大丈夫な感じしかしません。
宮藤官九郎大倉孝二のガッツリぶつかりあう芝居を見られたこともよかったな。
幹生の真紀ちゃんに対する後悔と同情と、それに対する刑事の冷静で冷酷な視点。カルテットの物語はぬくぬくと暖かい暖炉のようだけど、時折ひゅっと冷たい風が吹く。こういうところがわたしは好きだ。
ついに最終回。四人と一緒に小さなおにぎりを食べるリスがみたいよ。

『嘘の戦争』最終話

警察に追い詰められた一ノ瀬を助けてくれるのは六車さんだと思い込んでたんで、偶然なのかなんなのかあんな状態で隠れてるところへ守さんが「・・・浩一君?」とか来てくれちゃってアッサリ逃げられたどころか六車さんの結末が嵌められて逮捕とか笑ったわ(笑)。一ノ瀬のポリシー的に六車さんを始末出来ない以上、六車さんの落としどころとしては逮捕という道しかないだろうとは思ってましたが、相手が誰かも確認せず(一ノ瀬だと思い込み)警察に銃を向けトラバサミで痛めた足を守さんに蹴られて倒れたところを確保されるとか残念すぎて(笑)。
守さんが30年前に預けられた「証拠」も「もう使えないね」で終了だし、カズキも結局百田の命令でやったにすぎなかったし、わたしが期待を込めて予想してたことがことごとく外れるもんで開始15分ぐらいでもう笑うしかなかった(笑)。
でもそこから『詐欺師』として最後の復讐をやりきったのはお見事。興三に初めて直接会ったときと同じく腹を刺され華麗に水落ちしたもののあの時と違って今回は一ノ瀬の生死不明で終わるんじゃないかと思いきや、実は晃と一ノ瀬が組んで仕掛けた『嘘』だったとかちょっと痺れたし。晃のほうも30年前の罪を償えないかわりに嘘の罪を償うことになっても構わないという晃“らしい”ケジメのつけ方で、清々しい気持ちになった。
まぁ実行犯とはいえ命令されて仕方なくかかわった五十嵐が精神破壊され廃人状態になってたり、たまたま目撃しただけの新聞配達少年だった六反田が全てを失うことになったりしたわけで(まぁこいつは悪徳弁護士だから自業自得な面が大きいけど)、それに比べて『本命』の仁科興三に対する復讐がこの程度でいいのか?ってのはあるけど、一ノ瀬の目的は「自分が受けた絶望と地獄を味あわせる」ことと「謝罪」だと言い続けていたわけで、一ノ瀬がこれでいいと判断したならそれでいいんだろう。殺されたOLと結局みんな亡くなってしまったんだっけ?その遺族のひとたちはこんなもんじゃ納得しないかもだけど、これはあくまでも千葉陽一改め一ノ瀬浩一の復讐だからね。
ていうか名前だけしか存在してなかった頃はあれだけ畏怖されていた六車さんが実際はあんな感じ(笑)だったわけだし、まぁこんなもんだよねw。
家族のための一ノ瀬の復讐は、結果として三瓶父娘の橋渡しをし、そして仁科三兄妹を仲直りさせた。復讐は復讐しか生まないとか復讐からは憎しみしか生まれないとか言うけど、そうではない復讐ドラマとして綺麗に着地してみせたことは評価に値すると思う。
そしてこれから先、もしかしたら何かが変わってしまうのかもしれないけれど、これからも役者・草磲剛を見たいし、いろんな役を演じる草磲剛を見たい。そう思う。

石持 浅海『殺し屋、やってます』

殺し屋、やってます。

殺し屋、やってます。

一部上場企業に勤めるサラリーマンの平均年収である650万で殺人を請け負うビジネス殺し屋が殺す相手について調べる中で引っ掛かった事柄について謎解きをするという日常(?)ミステリですが、いつもながらに後味悪いのなんのって。調査対象というか殺す相手は650万という金と引き換えにしてでも殺したいと思われているわけで、一見そうは見えなくてもそれだけの理由があるというか、それが殺人という行為の理由になるかはともかくとして死ぬことにより多くの人間を救うことになる(かもしれない)という話から始まり、殺してくれと頼んできた“依頼人”の胸糞悪い話を挟み、ちょっと人情的な“殺されたい理由”の話になったかと思ったらやっぱり謎解きは後味がよくないもので、ていうかそれが真実なのかどうかは別として殺し屋の人間性に対する「(殺し屋やってるぐらいだからおかしいことは間違いないとしてもそれにしたって)こいつおかしくないか?」ってな思いが強くなったところでその殺し屋当人を殺して欲しいという依頼が来る、という流れの見事さに感嘆してたらその殺し屋自身の話がいちばんしょーもないもの(大した話じゃない)ってところが実に私の中の石持さんらしい。
一番石持さんだなーと思ったのは殺人ビジネスを構築したのが医者と地方公務員という社会的“勝ち組”だってところ。