『ダンス オブ ヴァンパイア』@帝国劇場

初めてのダンスオブヴァンパイアはとてもとても楽しかったー!。回によって出来に差があったりしたもんで(特にわたしのお目当ての役者に)観てる最中はいろいろと思うところはあったりしましたが、最後に踊ることで毎回「楽しかった!」で終わることができました。
こういう「客席参加型」というか、最近増えてきたカーテンコールはペンライト振って盛り上がろう的な演出はどちらかと言えば苦手なほうなのですが(自発的に盛り上がるのはいいんだけど、作り手側から「盛り上げて」と言われるのは嫌だという面倒くさいタイプの客です)、なぜかこの作品では素直に、いやむしろ赤のハンカチ持参してノリノリで踊ることができてしまった。スタンディングが禁じられている(ヘル様曰く「心はスタンディングで」)というのに2階も隈なく踊るってすごいよな。この踊らにゃソンソンってな気持ちになるのはなんなんだろう?。

「終わりなき欲望こそが神」を掲げてあるときはその欲望を抑えあるときは爆発させるヴァンパイアに「自由」を求めて身を委ねる若い娘、対して「理性こそが世界の希望」だと信じる研究者、そしてその弟子でありながらヴァンパイアの言葉に惹かれてしまう若者を軸にした物語は思ったよりもざっくりとしているというか、ご都合展開だなと思うところは結構あるんですよね。ひとつ例を挙げるとヴァンパイアになったシャガールとマグダが舞踏会に出てないこととか。舞踏会の生贄が娘のサラであることを知った二人がどうするのかは描かれないし、夫・シャガールと娘・サラと従業員・マグダとみんなヴァンパイアになってしまって独り残されたレベッカも本編では放置状態なのにフィナーレではヴァンパイアになって登場するし(そこはまあ結局そういうことになってしまったということなんだろうしその結末は好みです)。でもこのフィナーレで「こまけーことはいいんだよ!」ってなるんですよね。いい意味で「雰囲気とノリで勝負!!」を貫き通してる。


そのカーテンコールを盛り上げるのはヘルベルト役の植原卓也くん。
初日の感想でも書きましたが、タッくんヘルベルトはほんっとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーによかった!。
キャスト発表された瞬間絶対に合う!と確信しましたが、やはりここは間違いなかった。ハマリにハマってた。
あまりにも特殊すぎる役なので、これがハマリ役だとしても(帝劇)舞台俳優としてのキャリアアップという意味では・・・ノーカンかな?とは思いますが(ヘルベルトを演じたことで今の若手でこの種の役のトップランナーとして確固たる地位を築いたと言っても過言ではないけど、この手の役はそうそうあるものでもないんで)、エリザベートのエルマー役で奈落の底まで落ちてた評価がずいぶんと持ち直した、というか「ヘルベルトを経験してどうなるか?」という目線で次を観てもらえるところまでは這い上がることができたのではないかなと思う。
あとね、やっぱタッくんは「踊りの人」ですわ。フィナーレで長い手足と美しい手先でキレキレかつしなやかに踊るタッくんヘルベルトは何度見ても最高にカッコよくってテンション上がったもん。
本編の絡み(文字通りの「絡み」)もだけどタッくんヘルベルトと激イケヴァンパイア仕様の相葉っちが並び立つのはまさしく眼福以外のナニモノでもなかった。ここへきてまたわたしのオタク人生最高・最上・最良の瞬間が更新されました。10年前のわたしに「おまえの人生間違ってないぞ!」と言ってやりたい。


ところでそぼくな疑問なのですが、ヘルベルトさんを産んだお方はどこのどなたなのでしょうか?。『抑えがたい欲望』のなかで伯爵様は“次から次へと求めて また失ってしまう”と歌われますが、ではヘルベルトはどうやって「伯爵の息子」になったのか、わたしはとても気になります。見た感じ「血のつながり」はあるように感じるし(教授とアルフレートがやって来て「楽しくなるねっ☆」って感じでニッコニコしながら身体(肩と肩)をぶつけ合う伯爵とヘルちゃんマジ邪悪親子だったw)、元人間の血を吸って息子にしたのではなくヴァンパイアとして生まれてきたのだと思うのだけど。
ていうかわたし伯爵は純血種のヴァンパイアだと思ってたんですが、伯爵もまた血を吸われてヴァンパイアになった元人間で、息子もヴァンパイアにしちゃいましたってことだったりします?。伯爵ってのも人間の時から伯爵だから伯爵なのであって、教授が訪ねたお城も人間時代からずっと伯爵のお宅だとか?。


わたしのお目当て相葉裕樹さんのアルフレートはこれまた適役!としか思えなかったのですが、タッくんヘルベルトとは違いこちらは諸手を挙げてハマってる!!・・・・・・とまではいかなかったかなぁ。
初日感想ではハマってると書きましたが、確かにハマってはいるんだけど期待したほどの弾けっぷりとまではいかなかった。もっと出来るだろう、もっとやれるよね?という思いが最後まで消えなかった。
最初に書いたように回によって出来がマチマチで、相葉アルフレートに限らず全体的にそうではあったんですが(「あれ?今回どうしちゃったのかな?」という回がわたしが観たなかでは二度ほどありました)、相葉っち個人としても相葉っち比として今作はイマイチ安定せず、それもあって役を掴むのに苦労してるのかなぁという印象でした。

初日こそ全体的に硬さが見えたものの、声や動きの演技は回を重ねるごとに相葉っちのアルフレートらしいヘタレ可愛さがぐんぐんと増していきましたが、サラとのデュエットで一度も「決まったーーーーー!」と思えなかったことが残念。『サラへ』はもちろん、一人で歌うパートも教授と歌う曲も声はちゃんと出てたのにサラとのデュエットだけがどうにもこうにも不安定で、早霧せいなさんの恋人役を演じた「ウーマン・オブ・イヤー」では全くそんなことはなかったんで女性とのデュエットが苦手というわけではないと思うのですが、神田さんや桜井さんのように可愛い感じの声とは相性があんまりよくないのかなぁ?。となるとアナスタシアが心配になってしまう・・・。

それからへっぴり腰になったりびくびくしてたりと「ヘタレ」を演じてるところはヘタレ可愛いの極みで最高なんですが、ヘタレてないときは普通にかっこいいんですよね。これはまあ相葉っちがカッコいいので仕方ないっちゃ仕方ないんですけど、サラを助けにいかなきゃ!と走り出す寸前の身体の型とか普通にかっこいいのです。だからヘルベルトが相葉アルフレートを目視した瞬間にロックオンして秒で気に入ることについては猛烈な説得力なのですが、そのかっこよさがヘタレ度を薄めてしまった感は否めないかなー。
なにやらセットが変わった今回から演出も変わったそうで、教授とアルフレートのキャラクター像もこれまでとはちょっと違ったものになっているようなので弱気でヘタレ「だけど」のこの「だけど」の部分がこれまでと比べて割合的に大きくなっているのだとしたら、時折見せる格好良さもそういう意図によるところなのかもしれませんが。

ていうか!相葉アルフレートは!サラに噛まれて自らの血を味見しての「わるくないね(ニヤリ)」からのキバをつけてのフィナーレタイムがエグイほどカッコいいんですよ!!!!!。
わたしは今回が初めてのTdVなのでここでアルフレートがこうまでキメッキメで踊るとはつゆ知らず、初日は片手で顔を覆うようにして片足を曲げるジャンプ(東山リーダージャンプとわたしは呼んでますw)で上手から飛び出してきた相葉っちを見た瞬間あまりのカッコよさに一瞬意識を失いましたから。そんで正気に戻って即心のなかで突っ込んだ。いやだって!おまえさっきまでヘタレてたやん!!???って、ヴァンパイアになるとなにがどうなってこんなんになっちゃうの!??って。
でもさあ・・・・・・山口祐一郎さんのクロロック伯爵を見るとさあ・・・・・・ヴァンパイアにはなんかそういう・・・なんかがあるんだろうね?となっちゃうんですよ。なんなんだろう伯爵のこの・・・なんて表現すればいいのかわからない存在感はとなるわけで、そしたらこの回を重ねるごとにどんどんどんどんとキレが増し激しくなっていく相葉アルフレートの激イケヴァンパイア姿でのダンスも「ヴァンパイアだからね!」で納得できてしまうという。

歌い踊るヴァンパイアたちの背後に掲げられた大きな肖像画が教授から伯爵に変わって幕が下りるのですが、まさにすべてが伯爵の支配下、その「存在力」でもってあらゆるものを納得であり満足させてしまう山口祐一郎さんのいまだ衰えない独特さというか特異さというか、とにかくもうほんとになんだかわからん凄みを思い知るTdVでした(でも伯爵お茶目なところもあるんだよね。スポンジむくむくもだけど、風呂場の壁(シャガールの宿屋の壁ごと)がパッカーンって開いたら伯爵がいて「ごきげんよう」「怖くはない」って言うのが毎回ツボでした。いやこえーよ!!ってw)。