香納 諒一『虚国』

虚国

虚国

主人公の辰巳はカメラマンよりも探偵業を営むべきだと思う。どちらも片手間で出来ることではないだろうし恐らく性格上両立させようとも思わないだろうからここはあえてカメラマンは諦めて探偵業に戻れと言ってやりたくてたまりませんでした。だってこの推理力は絶対貴重だって。ゴシップ写真ならともかく作品としての“写真”はその人にしか撮れないものだと思います。だからカメラマン辰巳の代わりはいないと言える。でも芸術としての写真なんてものは必ずしもこの世の中に必要ってわけではないだろう。辰巳が撮る廃墟写真を見て何らかの感情を揺さぶられる人がいたとしても、その人にとってその写真がなければ生きていけないということはないと思う。でも探偵業は違う。浮気調査なんかはどうでもいいけど中には本当に困り果てすがりつくような思いで探偵に依頼してくる人がいるだろう。その人にとって『出来る探偵』ってのは神にも等しい存在だと思うのです。そしてその神になりえる才能を持っている人はほんのわずかしかいないのですよ。それを活かさないなんてまさしく冒涜だと思います!!。
・・・ということを読みながらストーリーそっちのけで考えていました(笑)。