石黒 耀『昼は雲の柱』

昼は雲の柱

昼は雲の柱

得意?の火山モノだけにデビュー作(死都日本)のスペクタクルを再び!と結構期待したのですが、これダメだー。小説として全く面白くない上に(売り物の)噴火する富士山の描写も迫力ゼロ。これで読むのは3作目なのですが、デビュー作は火山の描写、2作目は地震そっちのけでアホな会話をする登場人物たちが(まあまあ)良かったのですが、これはどっちもダメ。富士山に纏わる伝説や叙福の話を絡ませているのですが、かえってそれが邪魔。いくらこの作者の持ち味は自然災害の描写、そのスケール感で、それ以外は付属でしかないとしても、さすがに今時「あんたオバンみたい」なんて言う高校生いないって。編集の人も「オバン」なんて今誰も言いませんって教えてあげてよ。結構な値段なので意地で読んだけど、本当に苦痛だった。なるべく読みやすいように災害以外の部分は砕けた感じにしてるのかもしれませんが、この人にはそういうものを求めてるわけじゃないんだよな。せっかく他の人には描けない世界があるんだから、小細工なしにそこをガシガシ描いたものが読みたいと思う。