日向 旦『世紀末大バザール 六月の雪』

世紀末大バザール 六月の雪

世紀末大バザール 六月の雪

1995年五月。ノストラダムスの予言を信じる本多巧(タッキー)は、僅かな所持金でとりあえず大阪へ向かった。地球滅亡まであと4週間から最長2ヶ月。その間をなんとか過ごし世界の終わりを見届けようと思うも、残り金額三千円。お好み焼き屋で偶然居合わせた二人組の悩みにアドバイスをし、その見返りに仕事を紹介してもらおうとするが、何ができる?と問われ思わず「探偵だ」と答えたことから二人の家出少年を捜す羽目に。お目付け役に17歳の美少女(でもオカマ)をつけられ俄然やる気を出すタッキー。意気揚々と捜査を開始したが、立て続けに2件不思議な密室事件が発生。事態は家出少年の捜索からどんどんと発展し・・・。


第15回鮎川哲也賞佳作受賞作。なんだか不思議な話でした。関空の近くにある架空の町が舞台なのですが、日本であって日本じゃないような、不思議な感覚。物語のタイプは真逆ですが、この感覚はちょっとだけ内海文三に似てるかも。それからなんとなくなんだけど、色彩鮮やかな猥雑さと登場人物がどいつもこいつもクセ者だらけってあたりにジブリっぽい雰囲気を感じました。作中に思いっきり他作品のネタバレがあってオイオイいいのかよ!?って驚いた。まぁ全く知らない作品なので、本当にネタバレしてるのかどうか分かりませんでしたけど(山田正紀氏の解説を読むと、どうやらマジでネタバレしてるようです)。
結構な情報網というかツテをお持ちのタッキーはほんとのところ何をやってる人なのか?とか毒蛇ってなにさ?とか市長とモールの関係って本音の部分ではどうなのよ?とか???と思うことがいくつもあってちょっと消化不良なのですが、それもまた不思議な物語を演出する要素ということでまぁいいかなという気分。飄々としているからか、なんとなく好意的に受け止められる。人物造詣や物語の雰囲気はとてもいいと思うので、次作に期待。