倉知 淳『皇帝と拳銃と』

皇帝と拳銃と

倉知さんはもちろん存じてますが、完全にタイトル買い。タイトルに一目惚れ。
ということで、倉知さん初めての倒叙ミステリーです（へえー、初めてなのかーという驚きとともに）。
捜査一課の刑事が探偵役なのですが、これが犯人のみならず事情聴取される関係者全員もれなく見た瞬間に「死神」を想起する風貌で、助手ポジションの部下（コンビを組む刑事）はそこいらの芸能人が裸足で逃げ出すレベルの爽やかイケメンと、非常にわかりやすい特徴を備えてまして、事件のほうも「画」で見れば一目瞭然の動かぬ証拠によって犯人と特定されるので、『誰にでも解る倒叙ミステリー』という印象です。凝ったトリックではなく犯人のポカというか、え？そんなことで？（犯人がわかっちゃうの？）という物証が決め手になるので、犯人と探偵の駆け引きや心理的・知的なやりとりを求める人には物足りないことこの上ないかと思いますが（タイトル作とかまんまだった（笑））、最後にちょっと捻った1篇を持ってきたことも含めここまで解りやすいというのはそれはそれでひとつの魅力と言えるんじゃないかな。