『COME FROM AWAY』@日生劇場


いやあ・・・すごかった。すごかったしか出てこない。
脚本演出曲役者、すべてがかんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぺき。
12人の役者が目まぐるしく役を変えシンプルなセットを自ら動かし流れるように場面を転換する脚本を、誰かひとり、どこか一か所でもタイミングがずれただけで崩れてしまうのではないか?と思うほど緻密な計算によるものであろう演出のもと恐ろしいまでの集中力でもって演じる濃密な100分間は、噂にたがわず、いや噂以上にすごかった。マジですごかった。もう一度言うけどすごかったしか出てこない。
これはもうね、生で見ないと話しにならん。もしチケット代の高さやらなんやらを理由にして悩んでいるひとがいるならばとにかく観ろ。一か月間お昼を手製のおにぎりにしてでも観ろ。
この先何度も繰り返し上演される演目になると思うけど、このキャストが揃うことはきっともうないだろうし、悩んで観なかったことを後悔することになるのは1000%確実だから。

ブロードウェイでは無名のキャストで上演されていたそうで、日本版は真逆の超豪華スター俳優揃いだってんで・・・残念がる(言葉を選んだ)コメントをSNS等でかなりたくさん目にして、それにより劇場に足を運ぶモチベーションがいささか下がっていたわけなんですが、実際に見たら「バランス」が大事だということがよくわかる。
12人全員が横並びの「登場人物」だから、そこに突出したスターが一人なんし数人いる座組じゃ成り立たないし逆もまた然り。
そして日本版の初演はおそらく『濱田めぐみビバリーはマスト』から始まった企画だと思うんで(ビバリーだけソロ曲があるんだけど、この曲を濱田めぐみに歌わせたいというただその一心で上演権を買ったと言われても納得してしまうぐらい素晴らしい歌声だった。どこまでも広がる空が見えた)、となればめぐさんとガッツリやりあえるキャストを揃えるしかない。
つまり日本版がこれだけのスター勢ぞろいとなるのは必然なんだな。

スターばかりだからこそそれぞれが「大勢のなかの一人」になれるんだよね。全員がダイヤモンドだから一粒一粒が目立つことがない。
そしてダイヤモンドが12粒あればあたりまえだけどまばゆいのよ。12人(+ミュージシャン)あつまるととんでもなくまばゆい。それが上演時間中ずっと続く。
12人が一体となって歌い踊る迫力はやっぱりスターだからこそのものだと思う。これだけのスターが声を合わせることによる価値は確実にある。

そのうえで、ブロードウェイ同様、プリンシパル常連ではないキャストによるカムフロムアウェイも観たいと思う。
キャスト発表時になぜあれほどブーブー言うひとたちがいたのか、ようやくわかった。

わたしは完全なる「役者目当て」の観客でして、どれぐらいかと言えば大っ嫌いな作品であるロミジュリを伊藤あさひのマキューシオ目当てでチケット取ったぐらいなんだけど、もし12人全員知らない役者が演じることになってもきっと観ると思う。それぐらいこの「作品」が良いし、「役者」に対する視点を取っ払ったほうがより深く物語を摂取できるだろうから。

9.11というまだ記憶がしっかりのこってる史実、画面越しとはいえ自分の目でみた出来事の話だし、飛行機の乗客のなかには「動物」もいて(その話もひとつの軸となる)、となると今年のお正月にあった飛行機事故も思いださずにはいられなかったけど、でも優しいのよ。
それぞれの目的地に向かっているはずの飛行機が、突如ニューファンドランドの空港に着陸することになり、なにもわからない、なにも知らされないままどこだかわからない場所に運ばれる乗客と、突如住民の数と同じぐらいの乗客を受け入れることになったガンダーの人々との交流を描いた5日間の物語はとにかく優しい。
人種が違えば宗教も違う乗客たちにはいろんな思いがあって、でもガンダーのひとたちはできる限り寄り添い尽くそうとする。これが実話だっていうんだもん、すごいよなあ。

言葉がわからない相手に対して「聖書」は同じだと、「思い煩うことなかれ」の一文を指して相手と共有する、それがお互いの共通言語の始まりとなったという場面に感動する一方で、中東系の乗客は戒律を破らせてでも執拗なボディチェックをするという描写があって、脚本に込められているのであろう「多様性」を日本人のわたしがしっかり理解できたとはとても言えないけど、元の場所へ帰っていく乗客たちの感謝に応える「同じ立場になったらあなたも同じことをしたでしょう」というガンダーの住民たちの言葉は胸にぶっ刺さりましたわ。
とっさのとき誰かのために動ける人間でありたいよな(一番グッときたのはトイレ掃除の手が足りないとなって乗客にボランティアを頼むんだけどみんな聞こえないフリをする中で衛生状態を整えることがいかに大切なのかを誰よりも知ってるからと心臓外科医チームが掃除を買って出てくれたというエピソード。白衣に赤いビニール手袋のドクター集団かっこよすぎだろ!)。


とか言いつつ一番記憶にのこってるのは田代万里生の「卑猥な秘書」という自己紹介だけどw。なんだそのパワーワードw。