吉田 修一『犯罪小説集』

犯罪小説集

犯罪小説集

読み終わってみるとこの作品に「犯罪小説集」という作品名が付けられている理由、このタイトルである意味、そういうものが心に圧し掛かってくる気がする。
人が『犯罪』に手を染めるためには理由があって、まれにその理由がない人もいるんだろうけどそれでも理由がないことにはきっと理由があって、人それぞれというか、人が犯す罪の数だけ理由があって、衝動的なキッカケなんてなくとも日々の延長線上にそれはあるのかもしれないというか、日々生きていくだけでそこへ向かっているのかもしれないというか、そういう怖れがこの淡々と描かれる犯罪小説集にはある。