石持 浅海『御子を抱く』

御子を抱く

御子を抱く

気持ち悪いなあ。
星川という男の死から物語が始まるんだけど、この人は関わった者全てを魅了する素晴らしい人格者らしいのよ。で、星川を慕う者たちは自らを「星川門下生」と称し星川が買った家の近くに同じように家を買ったため(持ち家が持てない者はアパートを借り)その一帯は星川コミュニティ化してるっていうんだけどなにその空間ものすごく気持ちわるい。門下生たちは新興宗教などではなく星川の教えを“残し伝えたい”と思ってるだけだって言うんだけど、いやそれ宗教団体としての体裁を取ってないってだけで充分宗教だからと。こんな空間に“そうとは知らず”住んでしまったらと思うと怖すぎるんだけど。
ちゃんとそういう視点もあるんですよね。“そうとは知らない”家族の視点はちゃんとあって、でもその家族は最後まで“そうとは知らないまま”なの。“関係ない”の(そういう描写もある)。ただご近所さんみんないい人で良かったわねーってだけなのよ。それがとても気持ちが悪い。
そんな特殊環境を舞台に門下生の間で方向性の違いによる“後継者争い”が勃発し、その象徴である“御子”を巡りそれぞれの思惑がぶつかり合うなかで連続殺人が起きるってな話なんですが、犯人の動機はさすがの歪みっぷり。でもこの歪みは当然この環境であるがゆえの歪みなわけで、だから理解不能じゃあないんですよね。
で、そんな真相が明らかになったあとの後日談。この割り切った感じ。いろいろあったけど前向きに生きていきましょうねってな感じ。これが一番気持ち悪かったー。