『平清盛』第43回「忠と孝のはざまで」

命を懸けて身体の一番奥から血反吐とともに父・清盛に向けて放った多分最初で最後の本当の重盛の想い。


『哀しきかな 法皇様に忠義を尽くそうとすれば 山の頂よりも尚高き父上の恩をたちまち忘れることになります
痛ましきかな 父上への不孝から逃れんとすれば 海よりも深き慈悲をくだされた法皇様への不忠となります
嗚呼・・・
忠ならんと欲すれば孝ならず 孝ならんと欲すれば忠ならず 進退これ極まれり
かくなる上はこの重盛が首を召されたまえ 
さすれば御所を攻めたてまする父上のお伴もできず 法皇様をお守りすることもできますまい
父上・・・・・・』


まさに「忠」と「孝」の狭間でもがき苦しむ重盛がここにいました。
この瞬間が訪れるであろうことは分かってましたが、期待を裏切らない映像でぼんやりとでも見続けていてよかったと心から思った。
視聴者的にはさぁ、正直なところ忠も孝もどうかと思うわけじゃん。重盛がここまで追い詰められるほど忠義を尽くすほどの男かゴッシーは!?と思うし、棟梁である自分を何度も何度も文字通り駒扱いしてきた親父に恩なんぞ感じることなくねえ!?と思ってしまうわけでさ、だけどそういうもんなんだよね。理屈じゃねーんですよ。信念なんですよ。
しかも何!?さすがのとーちゃんも仲悪いはずの宗盛どころか盛国までもらい泣きしちゃってる空気読んで優しく言うと「法皇様に家に来てもらう」ぶっちゃけ言うと「拉致監禁」を取りやめたものの気持ち的には全然堪えてないっぽいし(つーかこれだけの訴えを聞いてもなお何考えてんだかわかんねーよこの人)、法皇様に至っては「重盛のこの一途な忠義こそが後白河法皇の付けいる隙であった」って!!。隙って!!隙ってなんだよクッソオオオオオオオオオオオオ!!!なわけでさ、おまけに宗盛以下平家一門の誰もかれもが清盛の言葉に従うことに何ら疑問を抱いておらず(重盛が来ないからってちゃっかり嫡男ポジに座る宗盛を顎でどかせる重盛カッコよかった!)、鎧をつけず平服のまま現れた重盛に対し「ハァ!?おまえまだそんな恰好してんのかよ」と言わんばかりの表情だった。もし重盛がほんとうに御所の警護に行こうとしても、誰一人従うものはいないのではないか・・・とすら思えるほどだった。だからこそ重盛のこの顔面グッチョグチョにしての鬼気迫る訴えが、その想いが、結局のところ一方通行でしかないってのが嫌ってほど伝わってきてしまってさぁ・・・・・・(´;ω;`)
多分重盛のこの熱弁が気持ち的に理解できない人ってたくさんいると思うんだ。そういうものだと分かっていてもこのドラマの中で後白河と重盛の繋がりをさして描いていないから熱演自体に心動かされはしても重盛の気持ちについていけないって人はいると思う。なんかそういう物語の枠外のことまでとことん不遇な重盛なんだよなぁ・・・と。
こんな風に「可哀想」と思ってしまうのはもしかすると違うのかもしれませんが、それでも今わたしが思うことはただひとつ。早くこの可哀想な重盛を死なせてあげてください。もうこれ以上この人を苦しませないであげて。