曽根 圭介『藁にもすがる獣たち』

藁にもすがる獣たち

藁にもすがる獣たち

複数の視点(もはや人生詰む寸前の定年世代の男と悪徳刑事とアラサー人妻)で語られる一見なんの繋がりもなさそうな物語がやがて一つに収束していくってのはよくあるパターンなのですが、その収束の仕方が見事でした。単純に三つの輪が重なるのではなく微妙にズレながらも密接に絡み合っていて、どこかで縋った藁がどこかでは天国行きの綱だったりして全てが必然のように感じられる。決して根っからの悪人ではない三人が破滅への道を選んでしまうことすらまるで必然であったように思えて、その逃れられなかった感・・・が恐ろしかった。