東 直己『鈴蘭』

鈴蘭

鈴蘭

畝原シリーズです。
相変わらずの権力(警察)・行政(役所)批判に加え今回の話のキーとなる人物が控えめに言って「話が通じない人」なので、楽しい読書時間ではありませんでしたが、だからこそ哀しみのなかに救い・・・とはちょっと違うけど、そこには確かに人と人との結びつきがあって、社会的な善悪の基準で見れば善ではないとしても、でも見方によっては必ずしもそうではない・・・と思える真相には心からホッとしました。
あとやっぱりホッとしたと言えば明美さんと幸恵が(今のところは)穏やかに暮らせているようで安心しました。幸恵の言葉や頭脳など所謂“中身”の成長と“身体”の成長スピードとの違いが今後畝原家にとってどういう影響を与えるのか一抹の不安は覚えましたが、どうか辛い展開になりませんように。
過去作品に登場した人物の再登場には畝原さんとともに私も「おおーーーー!」と声を上げてしまいました(笑)。これぞシリーズものの醍醐味です。
ところどころ「ん?」と思うところがあって、中でも1箇所ステップワゴンのワープ(笑)に関する記述は特に気になりました・・・。あれだけ飲酒運転云々って書いておいて、このミス(ミスであるならば)はちょっとなぁ。