曽根 圭介『沈底魚』

沈底魚

沈底魚

アメリカに亡命を希望する中国の外交官が手土産として渡した日本の大物国会議員がスパイであるという情報。アメリカはこの情報を偽証と判断するが、外務省からもたらされた「ホトトギス」なる人物の別情報との関連を調べるために、公安捜査員たちは捜査を開始する。


第53回 江戸川乱歩賞受賞作。すごくシンプルな文体で、余計な装飾をせずに淡々と書ききったという感じのエスピオナージ小説でしたが、公安の刑事ってもっと地味というか陰湿というか、総じて灰色みたいなイメージを持っているので、こんななんちゃって大沢在昌みたいな一匹狼キャラに捜四かよ!な暴力刑事とその一派はないだろうと思ってしまいました。でも刑事に魅力があったからそこそこ楽しめたところがあるわけで、とは言え福井オタの私としちゃ当然物足りないわけで、つまり微妙でした。面白くない!と言い切るほとでもないんだけど、面白かった!とも言えないんだよな。選考委員の中で未だ大沢さんの立場が強いんだろうな・・・なんて裏事情が垣間見えた作品でした。