五條 瑛『赤い羊は肉を喰う』

赤い羊は肉を喰う

赤い羊は肉を喰う

下町の風情や人情が残る町・八丁堀。弱小リサーチ会社で雇われ計数屋をしている偲は、単調ながらも平和な日々を満喫していたが、このところ小さな犯罪が頻発し、町には不穏な空気が流れていることに気づき、ほんの気紛れから原因を探り始める。そんな中、ひょんなことで知り合った笙という少年の友人の女子大生が失踪し、ついに死体で発見されてしまう。事件の背後に見え隠れする、選挙を控えた2世議員若い女性に人気のショップ、そしてワタナベ・グループという謎の存在。大衆心理を操ろうと企てる者達の目的は何なのか。


テーマはとても興味深いものだったんだけど、文量の多さの割には中身が無いというか、読了した満足感が少ない。ですが、鉱物シリーズの葉山と野口女史が主人公の偲に協力する形でカメオ出演。しかも嫌がらせで超絶苦いコーヒーを入れる葉山ですよ。おまけに直接名前は出ませんが、エディと坂下らしき描写もありとシリーズオタは読むべき。自分がオタだとはとてもとても思いませんが(オタレベルにはまだまだ及びません)、そんな私でもウハウハしながら読めましたから。エディと坂下に甚振られて鬱々とする葉山の図が大好物な私にとっては久々の燃料。まぁそれは横においておいたとしても、主人公の偲は一見軟派男ながらも頭がキレるなかなか素敵なキャラだし、笙は亮司のようだし、敵グループはどことなくサーシャの影が見えるし、偲に協力する友人2人も踊りの師匠で女の子みたいな顔してるつるつる系美青年に、背が高くて元プロサッカー選手で今は真面目なエリート営業マンで街中の女性に人気がある韓国人と、相変わらずオトコマエを書かせたら天才な五條瑛らしくよりどりみどり。その点はとても満足でございました。