- 作者: 薬丸岳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/08/09
- メディア: 単行本
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少年犯罪をテーマにした作品は被害者遺族側から描かれているものが多く、(私が読んだものの中では)数少ない加害者少年側を描いた作品でも、遺族との絡みよりも社会復帰した後の厳しさや孤独など、罪を背負いながらも事件を過去として生きていくことに焦点が当てられているものが多いように思う。そんな中でこの作品は、主人公を真ん中に被害者側の苦しみや痛み、憎しみだけでなく、加害者側の苦しみや痛みも同時に描くという珍しいタイプの作品です。特に加害者の「贖罪」という行為、その意味を問うところまで踏み込んでいて、かなり読み応えがありました。と書くと、なんとなく重苦しく堅苦しいように思うかもしれませんが、語り口は結構ソフトで、圧力は感じられない。それがいいことのか悪いことのかは分かりませんが。
少年法について、私は明確な主義主張を持っていない。どっちの立場に立つかによって全く異なるだろうし、同じ殺人という犯罪を犯したとしても、例えば親に虐待された末の結果と、欲望が暴走した結果とでは少年法の重みも意味も全然違うものだと思う。無力であるがゆえそうするしかなかったということだってあるだろうから、更正の道を閉ざすべきではないし、それには遺族の負と憎悪の感情は弊害になるというのも分かる。かといって、遺族の知りたいと思う気持ちも当然だと思う。だからケースバイケースだよな、というか実際に当事者にならない限り、私には関係のない法律だよな、と思う。無責任な言い方だけど。
その点、この主人公はスゴイです。因果は巡るっていうのか、そういう運命というのか、少年犯罪に関わりまくり。いくらなんでもここまで重なるとありえなくね?と思うんだけど、伏線は綺麗に張ってあったりするもんで、それほどムチャクチャな感じはしない。ストーリーそのものは面白く読めた。でも登場人物の使い方があまり上手くない。先に書いたように、共感できるタイプの話ではないから仕方ないのかもしれないけど、もうちょっと人物に魅力があれば良かったな。