楡 周平『再生巨流』

再生巨流

再生巨流

業界最大手のスバル運輸を舞台に、天才的なビジネスセンスはあるものの、人望がなさすぎる為左遷された男と、将来を嘱望されていたものの、肘を壊した野球選手(ピッチャー)たちが、それぞれの思いを胸に画期的物流システムの構築に人生を賭ける。画期的なビジネスモデルを織り込んだ、男たちの熱い企業ドラマ。

画期的祭り。マシンガンとか出てこない楡周平を読むのは初めてでして、熱とか勢いとかそういうモノはビンビン伝わってくるのですが、なんていうか、ぽかーんって感じ。インベントリー・コントロールとかフィージビリティスタディとかコンティンジェンシー・プランとか前後の文章から判断すれば意味が分からないわけじゃないけど、でも何それ?って単語が普通に使われていて、自分はものすごくバカでちっちゃい人間なんだ・・・って気分にさせられました。ちょっとへこむ。ていうかこういう単語って常識の範囲内なんですか?だとするとバカ丸出し・・・。
「鬼だるま」と部下から恐れられる主人公の家庭内エピソードがちょこっと挿入されてるのですが、これは不要だと思った。ビジネスのヒントになるのはいいとしても、主人公の内面を描くには程遠いし、むしろこの部分のせいで主人公の軸がぶれて感じられた。父親の諸々はどう処理したんだ?とか本筋に関係ないことが気になっちゃって・・・。というのも、画期的物流システムそのものを書いた部分と、人物を描いた部分の温度差がありすぎる。前者を書くのはすっごく楽しかったんじゃないかなーって感じがするんですよ。テンションMAXな感じが伝わってくる。でも後者はかなり適当というか、ステロタイプな人物ばっかりで、なんの工夫もないんだよな。経済小説としてはこんなもんでいいのかもしれないけど。
読後、自分にとって仕事ってなんだろうなぁ・・・と考えた。やりがいのある仕事に打ち込むことと、仕事はそこそこで仕事以外でやりたいことを持つ生き方なら私はやっぱり後者の人間だな。