松浦 寿輝『半島』

半島

半島

人生半ばで大学教授の椅子を捨て、瀬戸内海の先端にある半島というか島のような場所に仮初の棲み処を求めた中年男のお話。もともと興味のあった人であることに加えて装丁が好みだったので衝動買い。・・・んーわかんねー。なんなんだろうなぁこれ。夢幻。迷宮。雄飛。雌伏。影。そんな単語が残った。現実と虚構の境目があいまいで、その境界線で酩酊する感覚。そこそこ成功してた男が何の気なしというか気まぐれというかそれもまた運命というか、立派な仕事を自ら捨てて、これまでの自分やこれからの自分を思いしばしの休息などといいつつも知り合った若い女とずるずると付き合い、仮初と思っていたのに気が付けば馴染みはじめている。だんだんと堕ちてゆき溶けてゆき朽ちてゆきそして結局は何も残らないのか。すべては幻。そんなもんに理解も共感もできるわけないし、そもそもそういうものではないのだろう。とりあえず、酔った。日本の片隅でありながら、アジアの裏通りのような街に。まったく信用できない登場人物たちに。すごく離れていると思っていた場所が実は裏表の距離である・・・人も同じ。それだけは分かる。あらゆることは裏表、そういうことなのかな。全編に漂う空気は嫌いじゃない。でもやっぱりこういうのってわかんないなー。