佐藤 青南『市立ノアの方舟』

市立ノアの方舟

市立ノアの方舟

野亜市という地方都市で市役所に勤務する磯貝は、市長の体調不良の煽りで廃園を噂される市立動物園の園長を命じられる。職員たちから敵意を向けられる磯貝だが、家族に支えられながら動物園の改革に着手する。
ひとことで言ってしまえば素人園長と曲者飼育員たちがなんだかんだ言い合いながら動物園で働く姿を描くお仕事小説ですが、施設としての動物園の改革が軸でありながらも動物の名前が章タイトルになっているだけあって、飼育員たちが動物と向き合う物語なんですよね。受け持つ動物は勿論、年齢も様々な飼育員たちが園長の発言・発案に影響され、動物に対する愛情であったり、仕事に対するモチベーションであったり、自分自身と向き合い“動物園で働く喜び”を再確認する物語で、ただでさえ動物モノに弱い私は最初の1編から目が潤みっぱなしでした。ホッキョクグマの話とかこんなラストずるいよー!。
物語の中に動物の生態や、展示方法等、動物園に関する豆知識なんかもちょいちょい挿入されてて、読み物として大変面白かった。