木内 一裕『藁の楯』

藁の楯

藁の楯

二人の少女を惨殺した殺人鬼の命に10億円の懸賞金がついた。日本国民全ての殺意が1人の男に向けられる中、「人間の屑」を守るため、5人の男が日本警察史上最も過酷な任務につく。未曾有の殺意が充満する戦慄のサスペンス。


一見警察小説っぽいですが、設定が荒唐無稽すぎる。いくらなんでも新聞が「殺人広告」を載せることはないでしょう。
文中から絵が浮かび上がってくるというわけではないんだけど、映像向きだなという印象。日本国民全員が敵というデカイ状況からどんどんと焦点が定まっていくような感じや、携帯サイトに刻一アップされ続ける赤い点など、映像化した場合スピード感と緊迫感溢れるものになるだろうなぁと思った。
殺人鬼を福岡から東京まで護衛するというストーリーなんだけど、距離感は全く感じられない。また、殺人鬼を守るという任務を与えられた5人の警察官は、それぞれ仕事のやり方も考え方も異なるわけで、殺人鬼を含めた6人での人間ドラマみたいなものも狙ったのだろうけど、主人公以外の背景は全く描かれないので、ドラマ的なものも感じられない。小説としては薄っぺらな感じ。もっと描きこめる要素はいっぱいあるはずで、もったいない。
全体的に硬い文体なのですが、会話の中で「なに!」とか「なんだって!」ではなく「!」だけの箇所があったりして、ところどころの表現が漫画っぽいなぁと思った。