デニス・ルヘイン『愛しき者はすべて去りゆく』

愛しき者はすべて去りゆく (角川文庫)

愛しき者はすべて去りゆく (角川文庫)

パトリック+アンジーシリーズ4作目。ずっと連続して読んでいるので、それぞれの作品で描かれる事件は別として、作中流れる時間に伴い増えていくそれぞれの登場人物の身体だけでない心の痛みみたいなものに、もはや客観的ではない自分がいる。これがハマるということなんだな。それを差し置いても、今作は痛い。取り扱う依頼は、アル中の母親が出かけている間に忽然と姿を消した4歳の女の子を探すというもの。今回は警察(児童虐待犯罪対策班)と協力しながら真実に迫る。警察の人間と動いているせいか、アクションは少なめ。ブッバは出番が多めで満足。そして内容も密度の濃さといい人物描写といい、いままでで最高傑作だと思う。思った通りに進まないであろうことは予測の上だけど、これは想像を超えて4重構造。エピローグがとてつもなく重いと思った。いろんな意味で、子供が大人の犠牲となる物語は読んでいて気持ちのいいものではない。理不尽だとしても、守らなければならないのが法なんだろうか。パトリックとアンジー、これからどうなってしまうんだろう。この選択した結末の違いは決定的だと思うんだけどな。