早見 和真『砂上のファンファーレ』

砂上のファンファーレ

砂上のファンファーレ

郊外のニュータウンに家を買った一見ごく普通の家族(両親・息子二人)が母親の発病をキッカケに家族としての絆(形)を取り戻す・・・とまぁありがちすぎる話ではありましたが、この『ごく普通の家族』が普通と言うにはちょっと酷すぎる(主に経済面で)というか、ここまでいくと普通じゃないよね?と思いはするんだけどでも決して珍しくはない・・・ってことは『普通』なのだろうか・・・ってところでまず引っかかる。引っかかるとは読み難いとか疑問に思うとかそういう意味での引っかかりではなく、心のささくれに引っかかるというか、ザワザワする。
薄々家の内情に気付いていながらそこまでではないと思った(思いたかった)か、それとも逃げてたか、そういう気持ちもリアルだと思うのだけど、突然もたらされた「母親の病気」という“事件”に家族それぞれがそれぞれの立場で立ち向かう・・・それもまたこの手の話にしてはリアルだなと感じました。息子二人は成人してるわけで、父親と男三人家族と言えどもそれぞれの生活環境や事情は異なるわけで、例え母親が病気になったからといって一致団結して立ち向かうなんてことは難しいと思うのね。それまでも別に仲良し家族だったわけじゃないし。だからお互いがそうとは言わずにそれぞれの想いで出来ることを探すわけだけど、それをそれぞれの視点として章分けし個人の掘り下げがしっかりなされてて、最終的にそれが結果に結びつく様にはカタルシスを覚えました。後日譚にあたる最終章は出来すぎててちょっと腹立たしかったけど(笑)。
初めて手にとった作家さんですが、面白かった。他の作品も読んでみようと思う。