越谷 オサム『空色メモリ』

空色メモリ

空色メモリ

あー、やっぱりこの人大好きです。ヘンな言い方だけど、肌が合う(笑)。私は自他共に認めるイケメン大好き女でして、書物の中にも当然「イケメン」を求めるだけでなくともすればイケメンの描きっぷり>内容になることも少なからずあったりするわけなんですが、この作品の中心となる男子高校生はどこをどう引っくり返してもイケメンとは言えないデブと眼鏡です。それでも面白かった。最終的には二人がカッコよく見えた(思えた)ほど。内容はと言うと冴えない男子高校生(汗っかきデブ)の目線で語られるなんてことはないごくごく平凡な高校生活+最後にちょっとしたアクションがあるというものなのですが、そのなんてことはない高校生活が懐かしいというよりも愛おしいのです。ごくごく普通の高校生たちがかわいくて仕方がないのです。越谷さんの本っていつもそう。とにかく登場人物がみんな愛おしく、そして瑞々しいのです。ファンタジーノベル大賞を取った作品こそ“幽霊が見える”というちょっと特殊な人物設定でしたが、それ以外はほんと特別な“何か”があるわけでもなければ大した事件が起きるわけでもないんだけど、それでもなんかイイんです。この作品もその例に漏れず、私の中の越谷オサムに外れなし!説は引き続き、継続されることとなりました。
これまでの作品と大きく異なることとして、ラストの1行が読む人によっては中途半端に思えるかもしれません。でもこれが越谷さんの魅力だと思います。読む人によってどっちにでも取れるし、どっちに取っても多分笑って終われるんじゃないかと思えるところが越谷さんの素敵なところだと思います。