麻生 幾『瀕死のライオン』

瀕死のライオン〈上〉

瀕死のライオン〈上〉

瀕死のライオン〈下〉

瀕死のライオン〈下〉

日本で初めての特殊作戦部隊を実現するため陸上自衛隊内に組織された<特殊作戦群>は、剣先一群長の元、苛烈な秘密訓練を行っている。正式隊員になるための教育・訓練課程にいる清田もまた過酷な訓練に耐えていた。一方<内閣情報調査室>は活動の一切を非公開とし長年諜報活動を行っているが、間もなく定年を迎える国際部顧問の真中の元へ韓国情報機関の幹部から北朝鮮の陰謀計画に関する情報が寄せられた。その計画とは、北朝鮮が日本人を“隷属化”するというものであり、総理周辺にその計画に加担するスパイがいるという。訓練課程にいる清田が決死の思いで訓練地のヨーロッパで仕入れた情報により陰謀の全容を突き止めた真中は、その情報を総理大臣に伝えることに成功。通常の対抗措置が見つからない状況で、総理は遂に<特殊作戦群>に解決を委ねることを決断する。複雑に絡み合う陰謀のなか、秘められた部隊のミッションが始まる。


この手の話が大の好物な私としては手に汗握りながら読みましたが、文春あたりに麻生幾の署名入りで寄稿された軍事方面のレポのようなものを期待して読んだ人は、なんかこれ違う…と思うことでしょう。帯文なんかから受ける印象だと、フィクションなんだけどある程度の事実に基づく硬派なものを想像してしまいそうですが、ノリ的には海猿みたいなもんですから。逆に、内容に興味はあるけど硬そうだなと躊躇してる人には普通にアクション小説として楽しめますよ、と言ってあげたい。任務の為に散る男達の生き様が読めます。実際に北朝鮮がミサイル撃ってきたとかそういう昨今の状況を思うと楽しんでる場合じゃないんだけどさ、この平和ボケが!なんだけどさ、そこはまぁそれはそれこれはこれということで。ちなみに私は特殊部隊賛成派です。
で、最初に書いたようにこういう表に出ずに日本を守る人々というか、情報戦とか特殊部隊とかそういうのが大好きな私は、チヨダだの市ヶ谷だの専守防衛だのアサルトライフルだのそういう単語を見ると(読むと聞くと)反射的にテンションが上がってしまうのですが、この人の書く物語はいわゆるキャラ萌えはできない分、各組織間の関係だったり秘匿部隊の姿だったり、そういう描写が真に迫っているので、どこまでが現実でどこからか虚構なのかとそれを想像するのがすごく楽しい。楽しいついでに、福井晴敏五條瑛が描く世界と脳内リンクさせながら読むという、ものすごく申し訳ない読み方をしてしまいました。ごめんなさいなんだけど、でも面白かったですよ。