大石 直紀『オブリビオン 〜忘却』

オブリビオン―忘却

オブリビオン―忘却

幼い頃ジャングルジムから落ちて記憶を失った梓は、兄のアルバムの中に自分の姿がないことに気付き、自分の出生に疑問を抱く。一方、二つの殺人の記憶に苛まれながら殺人犯として海外潜伏生活を送る信彦は、二度と帰ることはないと思ってた祖国アルゼンチンの地に再び舞い戻ることになる。失った記憶に苦しみながらも父親を求めてしまう梓、捨てたはずの過去への郷愁に必死で耐える信彦。二度と会うはずのない父と娘は、運命に翻弄される。


第26回横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作。日本・香港・アルゼンチンを舞台とし、流れる年月も15年と一見壮大な物語のようですが、2時間ドラマと昼ドラを足して2で割ったようなストーリーでした。父と娘、二人の心が描かれているのですが、それがどうにも薄っぺらい。娘を愛しているにも関わらず逃げなければならなかった男の苦悩や、事故で失ったと思っていた記憶の中にある真実を知らされた娘の絶望の上辺しか感じられない。そうしなければならなかった理由も弱い。そもそも家族間で殺人しすぎ、そしてそれを軽く書きすぎ。テレ東賞受賞作なので、そのうちドラマ化されるのでしょうけど、良くも悪くも枠に収まるレベル、という感じです。