桂木 希『ユグドラジルの覇者』

ユグドラジルの覇者

ユグドラジルの覇者

第26回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。200X年、シンガポール市場でおこったおかしな動きを皮切りに、混沌とするネット経済界を制する世界規模のコンゲームが始まる。アジアを制する“華龍”、ストリートチルドレン上がりの若きEU経済界の女帝、米国最大のIT企業のトップ、そしてネットで出逢った日本人と素性を明らかにしない男の二人組。果たして世界経済の支配権は誰が手にするのか。


イマドキっぽい作品だなぁという印象です。ちょっと前まではネットバンクだのネットトレーディングなんて一部の人だけのものだったのに、今じゃ定年退職した人達がこぞってオンライントレードする世の中だもんな。確かに世界規模での戦いではありますが、アクションがあるわけでもなく、みんな自分の部屋でパソコン相手にカタカタやってる話なんで、手に汗握るような戦いはありません。地味。結構専門的なことが書かれてるとは思うんだけど、それほど難しくないというか、まったくこの世界の知識がなくてもとりあえずの流れは分かるぐらいのレベルまでは降りてくれてます。
ミステリーとしては、素性を明らかにしない男は誰なのか?ということと、二人組の目的はなんなのか?ということなのですが、そこまでの盛り上がりからすると拍子抜け。そんなちっこい理由かよ・・・ってちょっとガックリしました。ま、ちょっといい話ではありますが。
登場人物の誰の視点にも寄り添えないので、“保釈金5億”とか“10億ドルを寄付”などのニュースを聞いて感じる「へぇーなんかすごいねぇ、でもま、私には関係ないけど」みたいな話でした。