三崎 亜紀『バスジャック』

バスジャック

バスジャック

不思議なことも、普通のこと。心ざわめかせる7つの「日常」(帯より)

『となり町戦争』ですばる新人賞を受賞した超注目作家の新作です。帯文にあるとおり、不思議なことが普通として存在している、ちょっとだけズレた7つの物語です。
まず、その発想には驚かされる。特に「二階扉をつけてください」と「動物園」の世界は感嘆を通り越して畏怖さえ感じました。世界を丸ごと構築するような大掛かりなものではなく、ほんの小さな作り事なんだけど、どうしたらこんなことを考えつくんだろう。片やホラー風、片や自分探し風なのですが、その発想だけに留まらず、風刺が含まれてるというのかな、チクリと胸に刺さります。「動物園」や「送りの夏」など中編もあれば「しあわせな光」や「雨降る夜に」などページ数にすれば4ページ程度の超短編もあったりするのですが、文字数に関係なく全ての物語に完璧な世界があり、書かれている言葉の外へ広がる空間があるのです。
『となり町戦争』は評判ほどでもないかなぁと思ったのですが、私が間違ってました。この人、多分凄い。