乃南 アサ『マザー』

1篇目の「セメタリー」がストレートなホラーミステリーなので、「母親」をテーマとしたミステリー短編集のつもりで読み始めたんですが、2篇目以降はミステリーではなく、ホラー・・・・・でもないんだけど全篇『ゾワゾワ』した。

小説の題材としてではなく現実の話として私自身は「母親」というものに一切の理想も願望も拘りもないので「母親という呪縛に囚われている、全ての女性たちへのエール」という書評家の帯文に頷けるところは一ミリもないんだけど(この作品を「エール」と受け止める女性がいるのか、という視点では「なるほど」と思う)、読みながら、娘と母親も、息子と母親も、夫と妻も、その関係を描く作品は星の数ほどあるのにこの作品のような形で「父親」を描く作品はさほど多くないことに今更ながら気づき、それもまた大きな意味では「母親という呪縛」なのか?とトドメのゾワゾワ。