ジェフリー・ディーヴァー『真夜中の密室』

高度なセキュリティに守られる鍵のかかった部屋に侵入し住人の女性に恐怖を与える<ロックスミス>が今回の「敵」なんですが、ウォッチメーカーと並べて語る(そう作中で語られている)のは納得いかないなーと思いながら読み進めてたんですよ。
嗜好として似通っているところはあるんだろうし、ライムがウオッチメーカーを想起させられてるのもライムがそう思うのならばそうなんだろうとも思うんだけど、読者感情としては「敵」としての能力、いや魅力はウォッチメーカーとはくらべものにならないもんで。
でもそれこそが「仕掛け」であった。
文字通り二転三転する<ロックスミス>に振り回されて終わった感。

そして事件とは別件の裁判で失態を犯し、背景にある警察内部の政争に巻き込まれる形でライムがニューヨーク市警とのコンサル契約を解除されてしまうという・・・横軸?(状況的にはぜんぜん横軸なんかじゃないんだけど、でもレギュラーメンバーは無論のこと協力者たちのアシストを得てなんだかんだでいつも通りに捜査できてしまっているので)についても最終的にはガッツリ本筋、つまり<ロックスミス>に繋がるし、いつも以上に緻密な計算によって描かれた事件という印象が強い。

ここ数作はシリーズ全体を通しての「変化」が描かれていたのに対し、今作はライムとアメリアに「新たな友人」ができたぐらいでシリーズにおける流れとしては緩やかではありますが、気を付けているつもりでも「情報」を与えてしまうSNSの危険性という切り口としても読みごたえがありました。