『大奥』「五代将軍綱吉・右衛門佐編(6)」

いやなんかもう・・・すごいな。とにかく凄い、凄まじいとしか言えることがない。

家光と有功が共に生きるために、苦しみの果てに生みだした「大奥総取締」というお役目を曲者腹黒おじさんである右衛門佐がシレッとゲットしたかと思ったら(エロ爺になってても「有功様ラブ」であることは変わらない桂昌院こと玉栄でそれは嬉しい)(でも「有功様ラブ」であるがゆえに「有功様の娘である綱吉が産んだ子」に拘り娘を苦しめてるんだけどね・・・)(もっと言うと玉栄に「上様との間に子をなしてくれ。それは私の子でもある」と言ったのは有功であるわけで、有功のその言葉が言ってしまえば「呪い」になってんだよね・・・)、松姫があっという間に死んでしまい、そこからが凄かった。とにかく凄かった。

娘を失った綱吉の嘆きようは、最初は意外に思ったんですよね。子供よりも男なんだと思ってたんで。
でもそろそろ「新しい孫を儂にくれ」と父親に言われたあとで、吉保にポツンとつぶやいた「また男を相手に子供を作らねばならないのか」にこの人もまた「世継ぎを産む」という自分の役目に苦しんでいたのだと思い知り、そこからはもうただただ苦しかった。男を選び男を抱く綱吉の行動が綱吉自身を斬りつけているようで、全身から血をダラダラ流しているのがわかるんだもん。

ってところでの「辱め」発言よ。
そこまで何度も閨の隣で寝る右衛門佐のカットが挿入されていて、家光編ではそれは有功の「苦しみ」としての描写だったけど、視点を変えれば「将軍というのはこの国で最も賤しい女の事じゃ」になるんだなって、家綱を飛ばして家光と綱吉を直で繋げることで将軍として生きるしかない女の非業がこれでもか!と突き刺さるという、森下さんのさすがの剛腕をこれまでで一番堪能できた。

そしてその森下脚本を文字通りの体当たりで演じた仲里依紗の凄さ。
インティマシーコーディネーターなる人を配置してでもこれだけハードな演出を「やるんだ」という制作チームの覚悟はそれに応える仲里依紗(とそれを受ける山本耕史の演技力)あってこそのものだろう。
今なら殺せる、殺してくれと右衛門佐に訴えるも抱くことなく「ゆっくり休め」と言われ布団に横たわった綱吉のカットは実に素晴らしかった。

親や周囲の者たちが見ているのは自分の「器量(外見)」だけでそれ以外のことなど見てくれないし求められてもいないと解った上で「愚か者」を演じてると語るところもよかったし、それは右衛門佐もまた「同じ」であるとわかったことで、初対面の時点でもう右衛門佐は綱吉に心動かされたように見えたけどこれもまた運命なのかなと、家光と有功が運命の相手同士だったように、綱吉と右衛門佐もまた「逆転大奥」という歪んだ世界のなかで唯一解りあえる運命の相手なのだろうってのはそれとして、韓非子の記述違いの話は右衛門佐の「ミス」ってことでいいの?。二人とも同じ記述が違う写本を使って学んでいたことで右衛門佐の「仕込み」が上様にバレましたというだけで、これだけのことで右衛門佐の企みを見破った上様のほうが一枚上だったという解釈で(それ以上の意味はないってことで)いいのかな?。


追記・脚本家の方のお名前を間違えてました。なぜ間違えたのか自分で自分の脳がわからないのですが、ご指摘頂いた方、ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。