メフィスト賞を受賞された作家さんですが、今作がはじめましてになります。
まさに錚々たるという表現が相応しいであろう帯に並んだ人気作家さんのお名前と絶賛コメント(一言コメントにも癖というか特徴というか、そういうものが如実に出ててニヤニヤしてしまったw)に、期待を高まらせるのではなく却って身構えてしまった面倒くさい人間ですが、確かに面白かった。
謎解きとしてはどちらかといえばシンプルなんだけど、クローズドサークルものとして、そしてトロッコ問題に対するアプローチの仕方に趣向が凝らされていて、思っていたよりもストレートな本格ミステリでした。
物語としても探偵役が整然と謎解きをキメたあとで明かされる「真相」、そもそもの発端は“そこ”だったんだという驚きとともに全てが腑に落ちて、からの「――じゃあ、さよなら。」のキレ味が素晴らしい。
最近の風潮からして登場人物はもっと「キャラ付け」されてそうなものだけど、これといった特徴・個性のない人物造形なのはこういう結末だからだろうか。
罪悪感を少しでも薄めようと「そのとき」がくるまでの時間を耐えるためのアイテムを差しだしてしまった者たちの「このあと」のことを考えてしまうし、このまま誰にも知られずに済むとも思えないので、どっちを選んでも逃げ場はないってことかな。