長浦 京『プリンシパル』

昭和二十年。玉音放送が流れた戦後の混乱期に渋谷に拠点を構えるヤクザ組織の「代表代行」にならざるを得なかった水嶽綾女という女がGHQや政界を相手に身を削りながら組織を大きくしていく物語です。


めっっっっっっっっっっっっっっっっっっちゃめちゃ面白かった!!!!!!!!!!!!!


ヤクザの末っ子長女として生まれ、父親と家業を嫌い家を飛び出し教師として生きていたところが、組長である父の死が近いってんで呼び戻され、父の愛人と側近に“嵌められて”長男か三男が出征先から戻ってくるまで組織の代表代行にさせられてしまったところから物語は始まり、暴力と陰謀と策略、繰り広げられる物語はまさに全編血みどろ血まみれなんですが、戦後の裏歴史的な側面もあって読み応えが半端ないし、なにより主人公の水嶽綾女がカッコイイ!!!。
そしてヤクザ稼業の話なので男社会のなかで戦う紅一点的な、そんな物語を想像するでしょうが、これはむしろ女の戦いです。綾女を筆頭に出てくる女たちはみんな復讐に燃えていて、その戦いは苛烈の極み。

自分のために昔なじみの一家が丸ごと命を落とし、その復讐のために修羅の道でトップに立つことを選び、そこから逃げることは亡者たちが許してくれず、愛した男を奪われ、愛した男も殺し、そんな綾女の物語のラスト1行には息をすることができなくなるほどでした。

そんな物語がこの装丁で「プリンシパル」というタイトルだとかなんて悪趣味なのだろうか・・・!(全力で褒めてます)。

これぜひとも孤狼の血を撮った白石監督とスタッフで映画化(前後編の二部作)してほしいけど、綾女を演じられる二十代の女優がいるとは思えないんだよなー。