五十嵐 貴久『コンクールシェフ!』

料理人歴10年未満の若手料理人の発掘・育成を旗印にしているコンテスト「YBG(ヤング・ブラッド・グランプリ)」の10回大会を舞台に6人のファイナリストがしのぎを削り同志となる二日間の決勝戦を描く作品です。

なんでも五十嵐さんは「料理の鉄人」という番組の書籍化に携わっていたそうで、その縁でこの作品が生まれたとのこと。
なので舞台となる「YBG」も300人もの観客を入れ番組として放送されるという設定で、読む前は恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」の料理バージョンを想像してましたが蜜蜂~よりははるかにエンタメ寄りのライトな感じの作品でした。書下ろし漫画が封入されてるぐらいだし。

つまり出場者たちは「絵」として読む前から提供されているので(帯にカラー絵として載ってる)、キャラクターを読む作品と断言して構わないと思うのですが、これアニメ化(実写を含む映像化)を前提とした出版企画なんじゃないかな?。それぞれお当番回が出来るだけの背景はしっかりあるし、6人の横の繋がりは勿論コンテストを共に戦う「助手」との関係も描けるもん。
そういうことであればまるでプロット版のような薄さ(繰り返しますが蜜蜂と遠雷を頭の片隅に置いた状態で読んでしまったので、蜜蜂~の濃密さと比べるとそう言わざるを得ないのです。そもそも比べるなよってのはソレとして)も納得できるし。


読みながら「料理の鉄人」ってまさにバブルを象徴する番組だったよなーと遠い目になりました。
コンビニの商品を“一流料理人”がジャッジするのが「今(の時代)」で、視聴者が求めているのは最高級素材を使っての料理バトルではなく節約レシピなんだよなーと。
ていうかもし今料理の鉄人的な番組が始まるとして、鹿賀丈史さんのポジションを務めるのは井上芳雄か山崎育三郎かどちらになるだろうか(注:放送局が日テレの場合)と考える私は性格が悪い。