辻村 深月『闇祓』

帯に「初の本格ホラーミステリ長編」とありまして、第一章の「転校生」を読み終えたところでは確かに「ホラー」でした。
でも第二章「隣人」第三章「同僚」第四章「班長」と読み進めるとどんどんホラー要素がなくなっていき、それどころか「長編」であるはずなのに物語としての流れがないように思うのだけど(「繋がり」はじわじわと見えてくるけど)・・・となったところで最終章の「家族」ですべてが『解る』構成はさすがの巧さ。

読み終えてみたら結局「ホラー」ではないな(私の本棚のホラー棚にはしまわない)という感想にはなりましたが、「闇」の描き方というか「闇」の設定?が深月さんらしいなという印象です。「闇」との戦いよりもなんたらハラスメントとかマウンティングとか、そういうところを“読ませる”ところが。
それにより、ともすればダークファンタジーになってしまうところを「いつどこで自分も闇に捕らわれてしまうかわからない」という読後感になるところも好みでしたが、文句がひとつ。わんこが泣かせる働きを見せるんだけど、「豆しば」表記なのはアカン。