とある病院の小児病棟の一室で、入院している患者の容体が一斉に急変し、その後二人の子供が死亡してしまう。原因は点滴に混入されたインスリンで、混入させた犯人として同室に次女が入院している母親が逮捕される。母親の弁護を担当する同期の弁護士と拘置所近くで偶然出くわした伊豆原は、そのままの流れで弁護団に加わることに。
という始まりで、弁護士の伊豆原と被告である小南野乃花の長女の視点で前半は裁判までの日々、後半は裁判の内容と判決、そしてその後が描かれます。
この「野乃花」という母親が結構なクセのあるキャラで、こういうタイプの人間を苦手とする私は(実際私の周辺にもこんな感じの人がいるので実感として想像できてしまって)イライラさせられたし、長女が働く職場の描写も胸糞悪さしかなく、主任弁護士を務める著名な弁護士先生は死んでしまうわ同期とは仲違いするわってんでまさに「霧の中」の時間が長くて「楽しい」読書時間ではなかったけど、それだけに「まさか」の人物が証人として「まさか」の証言をしてくれたことで一気に形勢逆転するさまはまさしく『霧がはらわれた』ようで、そこに長女自身の成長を絡める手腕はさすがの雫井さんといったところです。確実に映像化されるな。