柚月 裕子『ミカエルの鼓動』



帯に“手術支援ロボット「ミカエル」を推進する医師・西條とドイツ帰りの天才医師・真木が難病の少年の治療を巡って対立。そんな中、西條を慕っていた若手医師が自らの命を絶ち、情報を手に入れたジャーナリストは大学病院の闇に迫る”ってなことが書かれているので、権力を巡る思惑が渦巻く大学病院を舞台にしたタイプ違いのカリスマ医師同士の戦い的な話だろうと予想して読み始めましたが、人間ドラマではなく医療ドラマであった。なんなら主役は「ミカエル」と言ってもいい。
なので、エンターテイメント性には乏しいゴリッゴリ硬派な作品ではありましたが一気読み。ただでさえ専門的な描写であることに加えてミカエルという架空のロボットを用いているにも関わらず、メインとなる少年の手術シーンは息を呑むようにして読みました。
プロローグとして描かれる「視点」が誰のものなのか、こういう理由・流れでのこの場面であることがエピローグを読んで初めて解る構成もさすがの巧さ。