『最愛』最終話

結局、梨央と優を守りたかった朝宮達雄と、息子を盲目的に信じる渡辺昭、2人の父親の子供に対する狂った愛情の話だったってことよね。
それに巻き込まれ取り込まれてしまった加瀬さんが「ぜんぶやりました」だなんて、だから犯人などいないってことでいいのではないかって言ったじゃないのさ・・・。

最後の最後で子供が子供なら親も親だなというドクズであることが判明し、それにより「気の毒な父親」から「当然の報い」となった渡辺父は加瀬さんの衣服を思いっきり掴んでたから水に浸かった状態であっても爪の間に残る繊維とかそういう「物証」を見つけられそうなもんだし(マリコさんだったら見つけてるっしょ)、橘しおりが事件当日高熱状態にあったことぐらい解剖で突き止められそうなもんだし(中堂さんだったら絶対突き止めてる!!)、要するに捜査機関が無能すぎたってことでしょ?と思う反面警察が無能であったから梨央の夢が叶うまで、あの状況下で「逃げる」ことも含め最後までしっかり加瀬さんは梨央のサポートをし続けられたわけで、なんだよもう無能警察サンキューな!って言えばいいのかよ。「確保!」→人違いでした!にはさすがに笑うしかなかったけど。

すべてが解った今、加瀬さんが梨央(と優)に対して抱いている「愛情」がどんなものなのかようやっと理解することができたけど、なぜ加瀬さんが2人に対して特別な感情を抱くことになったのか、それを考えると言葉が見つからないというか、達雄はなんてことをしてくれたのだろうかと思わずにはいられない。
梨央と優に一点の曇りもない幸せな人生を送ってもらうために、加瀬さんはこれからどんな時間を生き続けていくのだろうか。

そしてそれはたぶん大ちゃんも同じ、なのだろう。
法を司る弁護士である加瀬さんがその深すぎる愛情に影響され達雄の「代わり」となったように、電話越しに加瀬さんと話をしたあの時間を経て「こんなに幸せな日はないわ」という梨央の言葉を聞いて涙を流しながら、罪を犯したものを捕まえる刑事である大輝もまたともすれば自分のそれ以上の深い深い愛情を知り加瀬さんの「代わり」になったのだと思う。なるのだと思う。

梨央がモノローグで言っていたように「正直な大ちゃん」にとって加瀬さんの「やったこと」を胸に秘めて梨央と優に接し続けることはきっと少なからずの苦痛を伴うことだろう。
梨央は加瀬さんのしたことを“なんとなくわかってる”けど、加瀬さんがなんのためにそうしたかもわかってるから加瀬さんのためにも加瀬さんの望み通り“一点の曇りもなく幸せに生きる”と割り切って生きていける人間だと思うし(そういうところが橘しおりは許せなかったのだろう)、記憶のことについて聞かれ「過去の記憶は戻らないけどこれからのことは忘れない」と答えた優も、薬の効果としての記憶の回復かどうかはわからないけど加瀬さんのことを理解したうえでの優の『決心・決意』ってことなんだと思うけど、大ちゃんはそうじゃないだろうという意味で。
それでも大輝はそうすることを選んだ。
加瀬さんが守り続けた梨央と優がようやっと得られた「幸せ」のために、その笑顔を壊さないために笑って梨央と優の側に居続けることを。それは「簡単なこと」だと自分に言い聞かせて。


それは、ひとりで罪を被った梓に対し(真田家が経営から身を引くことを政信に受け入れさせることで会社を守ったうえで(会見に向かう政信のネクタイを直してやる梨央と梨央の背中をポンっと叩く政信からの2人の背中は良かったわー。終わってみれば「事件」については完全なる無関係だったのにいろんなものを失うことになる政信のフォローとしてこれは見事と言わずにはいられない))秘密を抱えて生き続けることはできないと、「私もそちら側に行きます」と言う後藤さんとは対照的だけど、どちらが正しいとかそういう話ではないんだよね。それぞれの愛の形であるわけだから。


まさしく「真相は愛で消える」最終回でした。またひとつ心に残る作品ができました。


願わくば、大輝を通じて2人の幸せが加瀬さんに伝わりますように。どうかどうか、加瀬さんに届きますように。