西澤 保彦『スリーピング事故物件』


女三人が曰く付きの格安物件をルームシェアすることになって、その「曰く」とはもちろん心霊方面なんだけど、4LDKの一部屋のど真ん中に動かない「ワープロ専用機」が置かれていて、それを動かすと恐ろしいことが起きるらしいというのがそれ。なので「ワープロを動かさない」という条件が契約についていて、動かさなければ使ってもいいんですね?と最年少の女子大生がワープロのスイッチを入れると21年間ウンともスンとも言わなかったワープロが起動し、21年前に殺された部屋の住人男性の残留思念と繋がることができました。

という始まりから三人とその関係者たちが「21年前の事件の真相を究明する」ことになるわけですが、いつものことではありますが推理<<<レズビアン(笑)。

女三人の内訳は探偵役の二十歳の女子大生・真歩ちゃんと視点となる二十六歳の女性・初音と三十四歳バツイチの女性・ユウさんなのですが、この初音とユウさんの間には10年以上にわたって男を奪い合う愛憎の歴史があるんですよね。ユウさんの離婚の理由も初音の婚約者とユウさんが不倫してバレたというものだし。
それなのにルームシェアするどころか深夜に映画を見ながらイチャイチャしたりするわけですよ。おかしい。関係性としてどう考えてもイカれてるし、ていうかこの描写いります?ってな話。

でもこれが西澤作品。美味しい食事とお酒とタイツとレズを読まされていると思っていたら、初音が語るユウさんとの愛憎劇にはちゃんと意味があって、最後には全部綺麗に解決しちゃってあらビックリといういつものやつ。

21年越しの「ホワイダニット」が解明されたことでワープロも静かに息を引き取りました・・・なんてことにはならず、ワープロを使っての交信については特にオチがつくこともなく女二人の絡みで終わるところまでいつも通りの面白さ。