宝塚 月組公演『桜嵐記』『Dream Chaser』

月組トップスター・珠城りょうさんの退団公演となる東京公演大千秋楽を配信で拝見させていただきました。
させていただきましたと書いたのは「桜嵐記」を激烈に絶賛するおともだちが配信に必要なポイントを送り付けて(笑)くれたからです。

実はこの配信日は帝国劇場で上演されている公演のチケットを持っていたのですが、モロモロの状況から劇場に足を運ぶことを断念したという裏事情がありまして、舞台が始まる瞬間まで「(帝劇に)行けばよかったかな・・・」という後悔みたいなものを抱えていたのですが、始まってわりとすぐ、具体的には老年の楠木正儀役の方(この時点では誰だかわからず)が出てきて「南北朝とはなんぞや」と説明してくれたところで「行けばよかったかな・・・」というモヤモヤは消えてました。あっというまに南北朝の世界に引き込まれてた。

というかこの説明がわかりやすっ!!!!!。

どちらかと言えば歴史に興味はあるほうなんですが、南北朝はそれこそこの作品の主人公である楠木正行の父である楠木正成後醍醐天皇とセットで)と足利尊氏についてちょいちょい知ってる程度だもんで解るかな・・・という一抹の不安があったりしたわけなんですが、この説明だけで「たぶんイケる!」という謎の自信が生まれたというw。

わたしは観劇というものを趣味にしてはいますが宝塚については1度だけ観たことがあるというド素人でして、宝塚と言えばベルサイユのばらを始めとする西洋のきらびやかな物語の印象ですし(今だったらやっぱりエリザベート)、1度の観劇も戦国BASARAだったので「和物」のイメージはなく、
(・・・・・と書いた瞬間気づいたんだけど、戦国BASARAも一応「和物」ですよねw。でもまあ特殊なアレなんでってことでw)
こんなにガチな時代劇もやるんだなーと、最初の驚きはそこでした。

と同時に、歌舞伎を好んで観る者として、顔面が綺麗!!!!!!!!!!という衝撃がまあすごかった。

モブの兵士や女官や庶民がみんな美しい。それぞれ役を演じているわけですから当然老けメイクや汚れメイクをしていても、それでも綺麗、というかアップに耐える!という衝撃に打ちのめされました。
だって歌舞伎だったら高師直の周りに侍る女達とかオッサンですもの・・・・・・。
西洋を舞台とする物語であれば歌舞伎と比較してしまうようなことはなかったと思うのですが、和物だとどうしてもね・・・見比べながら見ちゃうよね・・・。

(ここでちょっと歌舞伎の話をしますが、やはり歌舞伎が若い世代に広まらない理由として「わかりづらい」ということは大きなウエイトを占めているよなーと、改めてそれを思い知らされた気がします。そもそもが観るべきものであり楽しみどころが違う「べつもの」であると理解はすれども、何も知らない状態で宝塚と歌舞伎を観たとして、もう一度見たいと思う人の数としては桁違いだろうな、と、開始30分ぐらいでそれを強く強く感じずにはいられなかった)

そしてモブですら綺麗な舞台上で、その人たちとはまっっっっったくちがう顔面力と存在感を誇るのが主人公の楠木正行と二人の弟でして、これがまあ少女漫画か乙女ゲームから飛び出してきたかのごとき美形三兄弟!!!
最初に書いたように楠木正成のことは少しばかり知ってはいるもののその息子たちについてはほぼほぼ知らず(正行の名を四条畷の戦いの人として記憶してるぐらい)、ざっくりと言ってしまうと強くて凛々しくて真面目な長男に戦よりも料理を好む(人を殺すよりも食べるために動物を狩るほうを選ぶ)優しい次男、そして自由奔放な三男とかキャラ設定がこれまたわかりやすくって、次男だけが妻帯していて三男だけが河内弁で話すってところもそれを補強するわけです。

三男だけが河内弁使いなのはなんでなん?という疑問にはここぞというタイミングで説明がなされるのですが、これがまあ上手い。
長男も次男も河内弁で喋れるけど普段は坂東武者を気取ってるってなことを三男が説明し、ヒロインである公家の姫様が「ちょっと喋ってみて」と言いながらすっころぶとw、正行が“小さな声で”河内弁でなんか言うというお手本のようなギャップ萌えw(ここでなんて言ったのかは全く覚えていない己のポンコツ脳よ・・・)。

ていうか、この直前に三男の好意を姫様がけんもほろろに切って捨てるという描写があるんですよね。
歩き疲れた姫様に「水、飲む?」とフランクに話しかけるも蛇蝎の如く扱われる三男に対し、長男の気遣いはすんなり受け入れるといわかりやすい姫様なんだけど、これ三男はこの時点で姫様に好意を抱いてるってことだったんじゃないのかなぁ?。
でも姫様は兄貴(正行)のことを憎からず思ってるみたいだし、真面目一直線だから自覚してないだろうけど兄貴もきっとそうだろうと察してるから自分の気持ちなんてどうでもいいと思ってる三男・・・と考えると、冒頭で説明をしてくれた誰だかわからん老人が生き残った三男であり、弁内侍(姫様)に会いにいくまでこれほどまでの時間を有したってところにいろいろと想像を巡らせてしまってちょう切ない。
そうですわたしは断然三男推し(笑)。

で、戦に勝利した正行たちは吉野に帰還し帝にその報告をするんだけど、ここで帝と公家と武家の「身分」というものを明確に描くんですよ。で、それは正行と弁内侍の『身分違い(の恋)』のための説明かと思いきや、戦勝の褒美として「足利尊氏に和睦を進言するための使者となることを認めてほしい」という正行の希望をそれはならんと、足利は『敵』だと一刀両断する後村上天皇との「関係」を描くための前フリなのです。

和睦などもってのほかだと、それぞれ足利に誰を殺されたのか思い出せと、後醍醐天皇の「呪い」でもって正行の希望は打ち砕かれるのですが、それを厳命した後村上天皇と正行とは実は『幼友達』であることが次の瞬間明かされて、ここがこの作品最大のときめきポイントだった。

表向きは(公家たちや、もしかしたら正時と正儀に対してさえ)それを隠し帝とそれに仕える武士という立場でもって接し合いながらも実は「幼友達」だというこの関係性、それめちゃめちゃ好きなやつううううううううううう!!!と自宅で見ていることをいいことに文字通り転がりながらじったんばったん悶えまくりましたわ。

この作品のテーマとして『限りを知り 命を知れ』というカッコよすぎる文句がポスター(キービジュアル)に刻まれていて、直接は正行と弁内侍に掛かる言葉なのでしょうが、与えられた任のために生きること、そのために限りある命を使うこと、立場こそ違えど正行と後村上天皇もまたそうであると強く感じたし、ゆえに桜の花が舞い散る吉野の山で女たちと戯れる後村上天皇と、髪を振り乱し戦場で鬼神となる正行のコントラストが強烈な印象となって残りました。
あと後村上天皇を演じたお方がいい声、歌うめえ。


2幕のショー「Dream Chaser」についてはテーマがあってそれに基づいて作られていたのでしょうが、わたしにはどんな流れになっているのかわからなかったです・・・。
公式サイトを確認したら「夢を追い求める人」というテーマとのことですが、ショーが終わるまでに「世界観がわからん・・・」と10回は呟いたことを書き残しておきます・・・。

印象に残ったのはフラメンコの衣装で女性を巡り男性二人が争うダンスがあったんだけど、そこで負けてしまったほうの水色ジャケットの人がカッコよかったことと、韓国アイドルみたいな黒い衣装の7人で歌い踊る曲のセンターの人がイケメンすぎたことと、頭にターバン巻いたアラジンみたいな世界の最初にソロで歌われた人がド美形かつ歌うまだったことって、顔しか見てないんかい!(自ら突っ込む)。
ていうかこれ生で見てキャーキャー声に出せないとか拷問じゃないですか・・・・・・?。


そして最後は珠城りょうさんのお別れショー。
珠城さんだけでなく、一緒に退団される方々も緑色の袴を着て大階段を下りて組からと同期からのブーケを贈られていましたが、それぞれ違うデザインのブーケでそれを見ているだけでも楽しかったです。娘役の方はブーケと頭に付けた花飾りがお揃いだったり、逆に頭には何もつけていない(袴と同色のリボンだけ)方がいたり、長く垂れ下がったブーケではなく生花の花束?の方もいたりと違いがあって、トップスター以外はもっと「均一」なのかなと思っていたのでこういう自由は許されるんだなと興味深かったです。

あ、そうそう、退団される方だったか組替えされる方だったか定かではないのですが、「まやゆたか」さんというお名前が聞こえてびっくりしたわ。え?まやゆ??って(わたしの好きな作家さんに麻耶雄嵩さんという同じお名前の方がいるので)。

Dream Chaserでも思ったけど、衣装替えどうなってんだよ・・・こんだけの人数がこんなにも豪華な衣装に高速で衣装替えする舞台裏どうなってんだよ・・・とか思いつつ(例の羽、トップスターさんの羽が思っていた以上のゴージャスってかマジで孔雀でしかなくて、あまりのすごさに申し訳ないけど大笑いしてしまったw)、大門グラサンでキメる珠城さんとその周りでヒャッハーする月組のみなさまが大層楽しそうで(てか途中で“幽霊刑事(デカ)と霊媒の相棒”がどうたらって歌ってませんでした!?どんな世界観の作品なんだよw)、それを見ながら改めて「わたしはこの世界に足を踏み入れてはならぬ!ならぬものはならぬ!!」と改めて強く誓わずにはいられませんでした。この沼に入ったら文字通り死ぬぞ(次のトップスターは三男のお方なのかと画像を漁りつつ)。



配信って(劇場での観劇と比べると)集中が続かない面はどうしたってあるわけですが、13時半開演から35分休憩を挟み、カーテンコールは5回だったかな?終幕したのは18時半と、終わってみれば5時間の長丁場でしたが(一緒に観ていた母親が客のトイレを心配しまくってるもんで何度かキレかけましたw)最後まで楽しませていただきました。知らない世界ってやっぱりワクワクするよね!。
だからってこの沼に一歩でも足を踏み入れたら死ぬぞ俺!!(水色のイケメンは暁千星さんと仰るのかしら・・・?ってあれ?もしかして後村上天皇のお方??とアワアワしつつ)。