大倉 崇裕『冬華』


「夏雷」「秋霧」に続く山岳アクション最新作とのことで、そうかこれ「季節」で「2文字」のタイトルがついてるシリーズなのか(今頃気づいた)。

というわけで、便利屋・倉持と元自衛隊特殊部隊員・深江が名実ともに「コンビ」となっての新作ですが、感想はこの一言。


深江×倉持エモーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!

いやですね、いやだってですね、倉持と深江が同棲してるところから始まるわけですよ。同棲という表現については後述するんでここはスルーしてくれ。
でも深江は姿を消した。倉持になにも言わずにいなくなってしまった。
そこで倉持は深江の行方を探すことに決めて、深江とは旧知の中だという新キャラ(これがまた個性的)や原田の助けを借りて厳冬の穂高岳を単身で登ることになるわけですよ。
危険を承知でどころか、危険しかないと解っているのになぜ倉持は穂高岳に向かうのか。
なぜならそこには深江がいるから。深江が俺を待っているから。
これをエモと言わずしてなんという!。
しかもですね、倉持に「何も言わず」とは言うものの、ちゃんとヒントは残してるんですよ。倉持の「記憶」のなかに自分に通じる目印をちゃんと残しておく深江とかもうさあ、ヤッバイでしょ。
で、ここで前述の「同棲」という表現の話をするんですが、私「倉持」を内野聖陽さん「深江」を西島秀俊さんで読んでるんですよね・・・。今作とか私の脳内ではドンピシャで二人が躍動してくれちゃってるもんで、ついね、同棲って言っちゃうわけですよ。

はー、妄想がとまらん。

しかし今回の「敵」はソロで猟師をやってる60代の一般人でして、その背後には深江に個人的感情を抱く男がいて、さらにその背後には「国」がいるわけなんだけど、とにかく2.3日前までは鹿を狩ってた猟師のオッサンが相手なんですよ。オッサンにはオッサンなりの事情であり目的であり想いがあって「人を狩る」仕事を引き受けたわけだし、好敵手と狩り合って負けて死ぬってのはオッサンにとって悪くはない死に様と言えるのかもしれないけど、深江の「目的」と併せて考えると、こんなことに巻き込まれて死んだオッサンの人生とは・・・とは思ってしまう。