『あのときキスしておけば』最終話

開始前も初回を見終えたあとも、狙いが透けすぎて(わたしにはそう思えて)内容的にはあんまりいい印象を持てなかったんだけど、わりと早い段階で“そういうの”は気にならなくなったし、登場人物全員好きになってました。

なのに、最終回、最後の最後で「いやそれ違うだろ・・・」となってしまった。
具体的には関係者が開いてくれたサプライズ結婚式で唯月巴としてふるまっていたのは田中マサオであることに気づいていながら二人っきりになるところまでは気づかないフリをしていて、感謝の気持ちとともに「わかってた」ことを田中マサオに伝えたモモチが田中マサオの外見を「もう先生にしか見えない」からと中身が田中マサオだとわかっているのに「キスしてもいいですか?」と言ったところね。

中身が蟹釜先生だと信じてはいるものの外見はオッサンだからとどうしてもキスはできなかったモモチが、前回のラストでついにキスをしたのみならずプロポーズまでキメてみせたと。それはもはや外見云々など関係なく「このひとは巴さん」だからできたことだよね?。それなのに、目の前にいるのは唯月巴ではなく田中マサオだと「解って」るのに、「もう巴さんにしか見えないのでキスしてもいいですか?」ってなに?巴じゃなくてマサオだけどキスしたいってどういうことかと。

ママに別れを告げ、しっかり最終回まで描ききったSEIKAのアニメ化に許可を出し、でもモモチには会わずにいってしまったと思ってた巴がキスした瞬間そこに居た・・・という展開になるであろうことは予想できたよ。ここまで見てきて最後にもう一度巴が現れるならばキスがスイッチになるであろうことはわかってたよ。てかそうでなければならないとすら思うよ。だけど巴ではなくマサオにキスするってのはどう考えても納得いかん。結局“そういうの”がやりたかっただけかよと。
劇中で巴にツッコませてたけど、最後の最後で台無しにされた気分だった。

でもね、別れの言葉を残して先生がこんどこそほんとうに「逝ってしまった」と理解して泣いちゃうモモチが切なくてさあ・・・!身体をくの字に折って止められない涙を流すモモチと、そんなモモチをそっと抱きしめてやることしかできない、いや、抱きしめてあげられるようになった田中マサオの姿は素直に美しいと、麗しいと思えてしまったんだよね。なんだか負けた気がして悔しいんだけどさ。

今期は「役者の技量」が光るドラマが多かった印象ですが、このドラマこそ役者の好演あってのものだったと思う。
その筆頭はもちろん麻生久美子が演じる蟹釜ジョー/唯月巴をシームレスにコピーしてみせ、田中マサオとの演じ分けも見事だった井浦新だけど、なんといっても松坂桃李
偶然の結果とのことですが同クールで2本の連ドラで主演、それもクセのある話・役を演じたことによる相乗効果もあって、今期のとーりは誰が見ても「良かった」と認めると思うの。こんな“トンチキ設定のドラマ”であっても感情的に入り込んで見ることができたのは、とーりのモモチがルックス含め魅力的だったからに尽きる。
またひとつ「いい役者」への階段をのぼる松坂桃李を見ることができて嬉しいし誇らしい。