秋吉 理香子『息子のボーイフレンド』


タイトル通り、「息子に同性の恋人ができた」ことを描いたホームコメディです。
帯に「笑って、どきどきして、LGBT時代を考える」と書かれていますが、「LGBT時代を考える」というほど大層な感じではないです。いい意味で緩い。

物語は高校生の息子から「俺、男が好きなんだ」とカミングアウトされた母親の視点、ゲイだと母親にカミングアウトし恋人を紹介した息子の視点、母親のバンギャ仲間で腐女子仲間である友人の視点、会社でLGBTキャンペーンの担当者を務める父親の視点、息子のボーイフレンドの視点で描かれるのですが、母親の友人含め「関係者」だけの視点なので多角的というわけでもなく、「ホームコメディ」として読むのが正解かと。

高校時代にAV顔負けのエグイ性行為描写がある漫画を描いていた母親が、いざ息子がゲイであり男の恋人がいると知らされると「セックスさえしなければ「(男)友達」と同じ」と考える時点でLGBTを描く物語としては「ないわ」の一言でしたが、理解者のフリをする偽善者だという自覚を持つ父親の「今日は受け入れられても明日はわからない。明日になったら反対してるかもしれない。でも明日はダメでも明後日は受け入れたいと思う可能性もある。先のことはわからないけど、そんな風に毎日を重ねていけたらいいと思う」という言葉でまとめた物語は「ホームコメディ」として楽しめました。『息子のボーイフレンド』が完璧超人すぎて現実味皆無だしね。

そんななかで「現実味」としては、母親の友人が務めるクリニックで不妊治療のために精子採取に臨む夫が“実はゲイで、用意されたAVではダメなのでゲイものを持参してた”ことを知られてしまう場面が印象に残る。“妻のことは人として好きだし、やっぱり子供は欲しい”という夫の幸せはどこにあるんだろうなーと。


で、母親とその友人がLUNASEAオタクの設定っていります?いや別にあってもいいんだけど、妙にリアルだったもんで(笑)。