呉 勝浩『おれたちの歌をうたえ』

おれたちの歌をうたえ

おれたちの歌をうたえ

  • 作者:呉 勝浩
  • 発売日: 2021/02/10
  • メディア: 単行本

情報番組でこの作品が激賞されているのを見て興味を抱き手に取りました。初めての作家さんです。

昭和、平成、令和と3つの時代を生きるかつて「栄光の五人組」と呼ばれた男女の人生を描いた物語です。
令和の現在、60を前にした元刑事で今はデリヘルのドライバーであるヒー坊こと河辺に不審な電話がかかってくるところから始まり、友の死を知らされた河辺は茂田と名乗る若いチンピラと共に死んだサトシが残した暗号を解読すべく奔走することになるのですが、現在と過去を行き来しながら描かれる物語はまさに大河ミステリーに相応しい重厚さと濃密さで、これだけ長いスパンの物語にしてはさほど多くはない登場人物たちの数奇な人生っぷりに加え、学生運動をはじめとする“時代”という要素、そして暗号のヒントが永井荷風中原中也太宰治といった文豪たちの文学と音楽だもんで、いやあ・・・「小説を読んだ」という充実感がハンパない!。

あまりにもロマンティックすぎる幕引きはいささか恥ずかしくはありましたが(シチュエーションと会話がキマりすぎで・・・)、最後まで物語の世界にどっぷり引き込まれました。他の作品もぜひとも読みたい!。