小路 幸也『国道食堂 2nd season』

国道食堂 2nd season (文芸書)

国道食堂 2nd season (文芸書)

  • 作者:小路幸也
  • 発売日: 2021/01/27
  • メディア: 単行本


バンドワゴンシリーズは下町にある古書店が舞台だけあって堀田家を中心とする人間関係が密オブ密で、読んでいて息苦しさ、いや、メンタルの調子によってはそれにひきかえ自分は・・・という生き苦しさを感じてしまうこともあって、最近はそれがより顕著になってきてたりしていてちょっとまあ・・・一旦離れてみようかな、と思いかけているわけですが(離れたら戻らない(戻れない)可能性が高いので迷う)、そんなところへ「国道食堂」がはじまって、こちらは街道沿いにある食堂が舞台ということで、まさに「一期一会」の出会いと物語であるところが私の心を強烈に引きつけました。今の私にはこれくらいの人と人との距離感が心地よかったんです。
なので2nd seasonを心待ちにしてました。で、積読の山をそっちのけでいそいそと読みました。

結論から言うと、古書店がリングのある食堂に変わっただけでした。
1st seasonで登場し物語の中心を担っていた人物たちはそのまんま相関図入りし、2nd seasonで新たに登場した人物たちも大なり小なり既存の人物たちと(偶然にも)関わりがあり、関わりを持ち、人と人の縁がどんどん繋がり痛みや苦しみが喜びや幸せに変わっていくという、パッケージを変えただけでバンドワゴンと大差ないよね、という落胆でもって読み終えました。

バンドワゴンはもはや“関係者の紹介制”でしか問題が持ち込まれなくなってるのに対し、こちらは誰でも立ち寄れる食堂だからこその出会いと解決が描かれるところに魅力を覚えたのに、“同業者に教えてもらって国道食堂に食事をしにきたら「音信不通の元義姉がいた」”とか、“写真を撮るためにこの地を訪れたら「取引先の人間に捜してくれと頼まれていた人物がいた」”なんてことが続き、しかもこの「元義姉」と「捜していた人物」が同じだなんて、バンドワゴンシリーズに負けず劣らぬ人間関係の密っぷりなんだもん。

とはいえその密すぎる人間関係からなる群像劇はやっぱり面白いんだよね。だからバンドワゴンシリーズからも離れられない。感覚としては朝ドラ見てるようなもんですから。

で、バンドワゴンシリーズは「堀田家」という集合体が核であるのに対し、国道食堂シリーズは「国道食堂を営む本橋十一という元プロレスラー」が核なんです。
今回、十一さんが結婚し、国道食堂で働き暮らす者たちの「擬似家族感」がより増しそうな気配があるように感じられるのですが、核はあくまでも「十一さん」であってほしい。そこが大きくなってしまったらそれこそバンドワゴンとなにが違うの?ってことになるもん。