井上 真偽『ムシカ 鎮虫譜』

ムシカ 鎮虫譜

ムシカ 鎮虫譜

  • 作者:井上 真偽
  • 発売日: 2020/09/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


それぞれスランプに苦しむ音大生の男女5人は音楽の神が祀られるパワースポットだという無人島を訪れるが、突如カメムシの大群に襲われて・・・という、なかなかに想像したくないパニックホラー青春小説です。

クルーザーの屋根をパラパラ打つ音がしてるのは雨だと思ったらカマキリが着地してる音で、気づいたら足元カマキリだらけとか、足が長くて飛ぶ昆虫が全般的に苦手でなかでもカマキリが一番怖い私は確実に卒倒するね。

虫どころか「蛇」とか「蛸」とか「田螺」とか、虫偏がついてるものも全部虫扱いとか結構なトンデモ理論が通用しちゃってる一方で、島に祀られている「オセサマ」と「手足笛」の“正体”はなぜ「虫」で「音楽」であるのかということも含めて納得できるものだったし、ラストは謎の感動がありました。虫が人を襲うことについてはなんら解決してないけど。虫マジ恐ろしい。

探偵役にあたるフリーのピアニストだという人物は「音楽に因んだ謎によく遭遇する」と言ってるんだけど、これもしかしてシリーズのなかの1作なのかな?。だとしたら当然「音楽」は毎回物語のまんなかにあるのだとして、そこで「虫」という要素と繋ぐ発想はすごいなと(虫の大群はほんとうに厭だけど)感心したので、他の作品も読んでみたい。