中山 七里『夜がどれほど暗くても』

夜がどれほど暗くても

夜がどれほど暗くても

  • 作者:中山七里
  • 発売日: 2020/03/14
  • メディア: 単行本

文春をモデルにした(と誰が読んでも判る)週刊誌で副編集長をやってる男が主人公で、その息子がストーカー殺人を犯し自殺したことにより取材する側からされる側、追及する側からされる側になってしまい、ありとあらゆる悪意を向けられる・・・という今では珍しくもなんともなくなってしまった物語です。

今では珍しくもなんでもない題材を中山七里がどう料理するのか、そこに興味があったわけですが、『犯人の父親』がマスコミの人間、それも文春(と書いてしまっていいだろう)の副編であり、事件発覚後は新潮45をモデルにした(と誰が読んでも判る)編集部へ異動となることが最初のうちは物語においてポイントとなっているものの、被害者、つまり自分の息子が殺した相手の一人娘と関わりを持つようになってからはその要素はどこかへ行ってしまい、終わってみれば「子供を失った父親」と「親を奪われ虐めを受ける少女」がお互いの存在によって救われ立ち直ろうとする話でオイオイ「世間の悪意」はどこ行ったんだよと。文春の編集部員とはいえ所詮一般人だし、人々の関心なんてそう長くは続かないってことならば、それも物語に入れ込んで欲しいし、結局息子は冤罪であったわけで、それに対する世間の反応まで描いて欲しかったと思うけど、でもたぶん“そういう話”ではないのだろう。