米澤 穂信『Iの悲劇』

Iの悲劇

Iの悲劇


複数市町村による合併で広大な面積となった地方の市のその片隅に住人が誰もいなくなった村がある。市長の肝入りでその村に移住者を迎え村を蘇らせるというプロジェクトが発足し、その業務を担当する「蘇り課」が設立された。課員は仕事は部下に丸投げで必ず定時で退社する西野課長と、人当たりがよく学生にしか見えない観山と、相応に出世を望む公務員らしい万願寺の三人のみ。
という設定で、癖のある移住者たちから日々舞い込むトラブルを解決する娯楽小説・・・・・・だと思うじゃないですか!。
帯には

「徐々に明らかになる、限界集落の「現実」! 
 そして静かに待ち受ける「衝撃」。

と書かれてはいますが、ミステリ「悲喜劇」とあることだし気楽に読める感じだと思うじゃないですかー!。


・・・激重だったよ・・・・・・・・・。


いやね、全部で十二世帯を迎え入れる計画で、一気に移住されると受け入れる側も大変だからといってまずは2組の家族の移住となるのですが、この家族間でトラブルが発生し、結局両家ともあっという間に転出してしまいました・・・というところから始まるんで、この時点で「おや?」とは思ったんですよ。トラブルの中身も“騒音トラブル”というまさに“トラブル”でありながらもそこから思いっきり“犯罪”に発展しちゃってるし、思ってたのとはちょっと違うっぽいぞ?とは思いました。でも課長以下三人の公務員のノリは結構軽いし、なのでいやそれ犯罪じゃん!って案件を大事にせずまるく収めちゃう「悲喜劇」のつもりで読み進めていたわけですが、移住者たちの間で起きた数々のトラブルの背後にあったもの、所謂「黒幕」ですわ、その存在、その目的、その動機が明らかになった瞬間のどよーん感たるや・・・。帯文はまさしく内容を的確に表現してたよ・・・・・・。
で、確かに自然災害により山奥の集落が孤立して、土砂で埋まった道や落ちた橋への対応云々ってなニュースを見る時に、頭の片隅に費用対効果という言葉が浮かばなくはないんですよね。その「現実」を物語のなかにこういう形で、こうまでグサリと落とし込める米澤さんはさすがだな、というフワッとした纏め方しかできない・・・。